思い出の城 4
門を抜けて城の外に出る。もう一度城を見上げてみるが、特に変化はなかった。
「……えっと、いいのか? 前みたいに破壊しなくて?」
俺が訊ねるとアニマは大きくため息をついた。
「見たんでしょ? あの椅子にあの子が座っている所」
「え……ああ」
「あの子も椅子の中の想い人と運命を共にすることにしたのね。あの椅子は座った人の魂を永遠にあそこにとどめておくの……燃やしてしまったら、魂は散り散りになってしまう。この古びた城においておくのが一番いいのよ」
アニマはそんなことを言いながら振り返って城を見上げる。俺にはなんだかよくわからなかったが……アニマがそれでいいのならいいのかもしれない。
「へぇ……でもよぉ。一国一城の主になれるんだろ? だったら、俺も座ってみてぇなぁ」
「ええ。どうぞ。このボロいお城の城主になりたいんだったら、座ってみたら」
そう言われて俺は、またそんなことだったのかと理解し、座るのは諦めた。
「……けどよぉ。ということは、別にこの城は魔宝具でもなんでもなかったってことか?」
「ええ。全部あの魔女が魔法で管理していたのね。ま、魔女にも色々いるから、ああいう物好きがいてもおかしくないけれど」
「物好きねぇ……お前にだけは言われたくないと思うぞ」
と、アニマは俺のことを鋭く睨みつけたので、それ以上言うのはやめておいた。
「それにしてもなんとか一段落してよかったな……で、代償魔宝具はまだあるのか?」
俺が訊ねとアニマは大きくため息をついて力なく頷いた。
「ええ……残念だけれどまだあるわ。でも、後一つ……後一つくらい私が干渉してやれば、あっちの方から私に会いにくるはずよ」
「へ? あっちって……代償魔宝具を売りまくっているやつか?」
「ええ。まぁ……心当たりはあるのだけれど」
「……なんだって? まさか、お前の知り合いなのか?」
俺がそう訊ねるとアニマは苦々しい顔で俺の質問を肯定する。
「魔女なんていうのは、交友関係だって限られているんだから、大体は知り合いなの。もちろん、今の人みたいに私より大分年上の人となるとわからないけれど……」
「え……ちょっと待て。今の女お前より年上って……何歳だったんだ?」
「……どうでもいいでしょ。ほら、さっさと帰るわよ。どこかの家の扉を探しなさい」
そう有耶無耶にされ、結局俺とアニマはとんだ苦労をして「マジック・ジャンク」にまたしても戻ったのであった。