英雄の剣 2
扉を開けた先にあったのは、のどかな光景だった。
人々が農作業に従事し、鶏が鳴いている。
「……ここに、その『英雄の剣』とやらがあるのか?」
「ええ。なんでもここ、『英雄の村』って呼ばれているそうよ」
「英雄の……村ねぇ」
そう言われてあまりピンとこなかった。それくらい、その村は普通の光景だったのである。
「さて、その英雄さんをさっさと探しましょうかね」
「……えっと、その英雄っていうのが問題なのか?」
「ええ。なんでも彼は、これまで戦争でいくつも手柄を立てた、歴戦の戦士だそうよ」
アニマと俺、そして、セピアは周りの光景を見ながら捜索を開始した。しかし、見た所、誰も魔宝具など扱うような人間を見ることもできなかったし、魔宝具を売っている様子も見られなかった。
「ホントにこの村なのか? 間違いじゃないのか?」
俺がそういうとアニマはムッとした顔で俺を見る。
「……精霊さん。魔宝具の気配、感じない?」
「う~む……あの大きな家の辺りが怪しいんじゃがのぉ……」
セピアの云う大きな家……おそらく村長の家だろう。
「じゃあ……行くしか無いわね」
結局俺達は村長の家に行くことにした。家の前まで来て、アニマはコンコンと扉を叩いた。
しばらくしてから、扉が開くと、中から人の良さそうな老人が表れた。
「おや……アナタは……」
「はじめまして。アニマ・オールドカースルと云うわ。突然だけど、アナタ、剣を持っているわよね」
相手に二の句を継がせない勢いで、アニマは男にそう言った。
「え……ええ。まぁ……それが何か?」
「あの剣は危険な存在なの。見ての通り、私は魔女。悪いのだけれど、あの剣は回収させてもらうわ」
すると、男は少し困った顔をしたが、それからすぐに扉を開けて、中へ入るように促した。
「そうですか……魔宝具……だったんですか」
男は悲しそうな顔で俺達にそう言った。
「ええ。そうよ。アナタは、村長?」
「……はい。村のみんなも是非と言われたもので……」
村長はそういって、居間に飾ってある剣を見上げた。
銀色の剣は見た目にはただの剣に見える。俺もこれが魔宝具だと言われても納得出来ない気がした。
「で、剣、回収させてもらっても構わないよね?」
「え……ええ。どうぞ」
そういってアニマは剣を手にとった。と、俺は先程からなぜかジッとアニマが手にとった剣を睨んでいるセピアが気になった。
「セピア……どうしたんだ?」
「……違う」
「は? 何が?」
「それは……魔宝具ではないぞ」
セピアの言葉に、アニマは剣をジッと見た。すると、アニマも何かに気付いたのか、村長のことを睨みつける。
「アナタ……これ、どういうこと?」
「……ふっ。あははっ!」
と、いきなり村長が立ち上がった。そして、大きな笑い声を上げる。
「……魔女ってのは案外大したこと無いなぁ。どっちが魔宝具か、わからなかったのかい?」