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戦場の魔女(後編)

「あ、アニマ……大丈夫なのかよ?」


 俺は思わずアニマに訊ねる。しかし、アニマはそのまま歩き出してしまった。

 俺はアニマのすぐ後ろを歩いた。

 そこへ、矢が飛んできた。


「あ……アニマ!」


 と、俺が叫んだ瞬間だった。

 矢は、まるでアニマを避けるように、別の方向に飛んでいったのである。


「へ……ど、どういうことだ?」

「言ったでしょ。私の近くいれば安全だって」

 その後もアニマが歩いて行く。

 まるで誰もアニマに気づかないようで、剣で斬りつけてくる奴もいなかったし、矢も避けるように飛んでいった。


「あ、アニマ……どこへ行くんだ?」

「このおバカなことをしている張本人に会いに行くのよ」


 そして、アニマはそのまま敵陣の中央を突破していった。さらに進むと、なにやら、ひときわ豪華な鎧を着た男が馬の上に乗っているのが見えた。


「え……アイツ?」

「ええ。ご丁寧に戦場に出て、自分が大将ですって宣伝してくれているわけね。おバカな人だわ」


 そういってアニマは男の方に近寄っていった。


「ちょっと、アナタ」


 と、いきなり、アニマは男に話しかけた。男が反応するよりも早く、アニマは男に向かって手をつきだした。

 その瞬間、アニマの手のひらから黒い炎が出た。炎は男の鎧を包み、男は鎧から転げ落ちた。


「う、うわぁぁぁ!!!」


 男の絶叫が木霊する。周りにいた臣下らしき者達もようやく異変に気づいたようで、アニマの方に顔を向けた。


「き、貴様ぁ! 何物だ!」

「……魔女よ。分かるでしょ?」


 アニマがそう言うと、臣下たちはヒッと小さく悲鳴をあげた。


「ま、魔女……どうして……」

「あのねぇ……知らなかったの? この領地に魔女がいるって」

「し、しかし……ウチの領地の魔女はこの領地には魔女はいないって……」


 動揺した様子で臣下たちは顔を見合わせている。アニマは大きくため息をついた。


「じゃあ、その世間知らずが分かっていなかったのね。いい? このままだと貴方達の大将は灰になるわよ? それでもいいの?」

「そ、それは困ります! 魔女様! 私達は全軍撤退いたしますので、どうか、若様のお命だけでも!」


 と、初老の臣下がアニマに懇願した。アニマがパチンと指を鳴らすと、それまで大将を包んでいた黒い炎が一瞬にして消え去った。


「さぁ、さっさと貴方達のお家に帰りなさい」


 アニマの言葉とともに、全軍撤退の指示が出されたようだった。

 それまで戦っていた南側の領地の者達は大急ぎでいなくなってしまった。

 それまで黒い炎に包まれていた敵の総大将も、這々の体で逃げてしまったようだ。

 残された俺が住んでいる領地の兵士たちの喜びの声が聞こえる。

 俺は唖然としてアニマを見ていた。


「終わったわね……さぁ、帰りましょうか」


 アニマが何事もなかったかのようにそういった。俺はようやく我に返ってアニマを見る。


「……お前、一体何なんだ?」


 思わず俺が呆然としてそういうと、アニマは妖艶に微笑む。


「何って……しがない中古魔宝具販売店の店主だけど?」

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