破滅の願い
「な……お前……」
メンテの腹には完全に剣が突き刺さっていた。その剣は紛れもなく、カルマの右目が柄の部分に嵌っていた剣である。
しかし、その部分には右目は見当たらない……ということは……
「カルマ様は……完成したんだよ……」
瀕死の状態のはずなのに、メンテは嬉しそうにそう言う。
「メンテ……どうして、こんなこと……」
いつの間にかフォルリが人間モードに戻り、メンテに詰め寄る。
「どうして……? 決まって……いるだろ……この世界に、復讐するためさ……」
「何言って……なぜ、カルマを復活させること、世界への復讐に……」
フォルリは理解できないという顔でメンテを見ている。メンテはフォルリから目を逸し、僕のことを見る。
「……ジョセフ・タイラー……君にはわからないだろうが……アニマ先輩だって、ずっとこうしたかったはずなんだ……」
「え……アニマが……」
すると、メンテは嬉しそうな顔で目を細める。
「でも……アニマ先輩はそれを隠して、お前みたいな出来損ないと平和に暮らそうだなんて……そんなの、アニマ先輩じゃない……」
そういって、メンテは勝ち誇ったように俺を見る。
「だから……僕が壊してやった……そんなの、僕が知っているアニマ姉様じゃない……だったら、あの悪魔に、魂を売ってでも……」
「メンテ……じゃあ、アナタ、カルマのこと……」
フォルリは信じられないという顔でメンテを見る。メンテは小さく頷く。
「知ってたさ……カルマ様が、僕のことを……用済みになったら、殺すことくらい……それでも、いいよ……これで、こんな世界も、僕のことを拒否したアニマ先輩も……全部壊れちゃうんだから……」
俺はさすがにさすがに我慢できなくなった。思わずそのままメンテの胸ぐらを掴む。
「おい! てめぇ……勝手な事言いやがって! アニマがいつそんなこと頼んだよ! アニマは……お前が思っているような奴じゃ……」
「ひ……ヒヒヒ……苦しめ、ジョセフ・タイラー……ひひ……僕はもう死ぬ……さぁ、カルマ様……アニマ姉様の身体を存分に使って、このクソみたいな世界を……ぶっ壊し……て……」
そう言うと、メンテはガクリと首を垂れて動かなくなった。それは、メンテの命が尽きたことを示す合図だった。
「……やれやれ。面倒なことになったね」
俺とフォルリの背後から、レーナが大きくため息をつきながらそう言った。
「両目が回収されたとなると……残るは、アニマの使い魔と、左手だけか」
レーナにそう言われて、俺は黒炎竜フレイアのことを思い出す。
「じゃあ、カルマはそこに……」
「……おそらく、もう戦いは始まっている……いや、終わっているかもね」
レーナのその言葉に俺とフォルリは思わず顔を見合わせてしまう。
「え……戦いって……」
俺の言葉を聞くと、レーナは面倒くさそうに先を続ける。
「黒炎竜を操る『激昂する紫電』と、『黒炎の妖女』の魔力を身につけた『蒼炎の魔女』の戦いがね」




