魔女の日記 第五巻 4
そのまま、俺達はドラゴンが倒れたであろう場所に近付ていく。
辺りには未だに何かが焦げたような……嫌な匂いが漂っていた。
しばらくすると、蒼いドラゴンが黒い炎に包まれているのが見えてきた。
「アニマ……」
黒いドラゴンの前に立っているのは、幼いアニマだった。
既に何度もこの記憶を封じ込めた日記で見たことがある。
そして、俺はもう一人、アニマと対峙する人物に目を移す。
「……え?」
俺は思わず目を疑った。
白い髪に、真っ青な瞳を持った少女――その瞳はなぜか片方しかなかったが――その人物が、なんとなくだが、カルマであるということはわかった。
しかし、問題はその顔だった。
「……アニマ?」
その顔は、アニマにそっくりだった。
というか、アニマにしか見えない。違うのは髪の色と蒼い瞳だけ……目の下のほくろの位置まで一緒なのである。
一体どういうことなのか……俺は混乱してしまった。
「カルマ……これでおしまいです」
幼いアニマが、幼い時の口調でカルマに対しそう言う。
すると、アニマとそっくりの顔をしたカルマはにんまりと微笑む。
「……殺せるのか? アニマ」
嬉しそうにそう言うカルマ。その言葉は、むしろ、アニマに自分を殺させることを楽しみにしているような口調だった。
アニマは黙ったままである。
「いいのか? 私を殺すということは……お前は自分自身を殺すということだぞ? 私はお前のことを愛している? それはなぜかわかるか?」
「……私が、アナタだからですか?」
アニマがそう言うと、カルマは嬉しそうに微笑んだ。
アニマが……カルマ?
俺は益々混乱する。確かにアニマとカルマは似ている……
まさか、姉妹? それとも、親子だったりする……のだろうか?
「……ああ。そうだ。お前は私。お前にとって私は、母であり、姉であり、友であり、師匠であり……そして、何より――」
そして、間を置いてから、カルマはニンマリと微笑んだ。
次の瞬間、カルマが言った言葉は俺の想像を絶する言葉だった。
「……私はお前の創造主だ。なぁ? 私の最高傑作……『魔宝具アニマ』」
その瞬間、俺はカルマが何を言っているのかわからなかった。
魔宝具……は? どういうことだ?
アニマが……魔宝具?
既に俺の頭はパンクしそうだった。俺が見ている記憶はなんだ? 一体これはどういうことなのか?
「……ふふっ。混乱しているようだな?」
と、いきなり信じられないことが起こった。それまで俺に気付いてもいなかったカルマが俺の方に顔を向けてきたのだ。
「え……お、お前……」
俺が戸惑っていると、嬉しそうにカルマは俺を見て笑ったのだった。




