魔女の日記 第五巻 1
「……で、店主からこの日記を預かってきた、と」
店に戻ると、俺とフォルリ、そして、ヴィオは、セピアを交えて、ヴィオがアニマから受け取ったと言って持ってきた日記を前にして考え込んでいた。
「しかし……いつもと違うな」
俺は思わず呟いた。
アニマの日記という割には、いつもと異なっていた。それは随分と長い間放って置かれたようで、ところどころ黒ずんでいる。
「あんまり見返したりしなかったのでしょうか?」
ヴィオが不安そうにそう言った。
「当然」
と、フォルリがピシャリと言う。
「アニマにとって、カルマとの記憶、封印すべき記憶……見ていないし、人にも見せたくなかったはず」
フォルリの言い方は真剣そのものである。アニマがそんなものを俺たちに見せてきたということは……なんとなく事態が深刻だということは理解できた。
「……で、この日記も例のごとく開いた途端に記憶の中に吸い込まれるんだろうが……入って大丈夫なのか?」
俺が訊ねると、俺以外の全員が俺のことを見返してくる。
「……危険、としか思えないんじゃがのぉ」
セピアが嫌そうな顔でそう言う。俺も同意見だった。
「かといって、見ないわけにもいかないしな……」
「大丈夫。タイラー、私が守る」
と、フォルリが意気込んでそう言う。
「わ、私も、御主人様を守りますよ!」
ヴィオもそれに続いてそう言う。そんな風に言われると思わず微笑んでしまう。
「ああ……そうだな。仕方ねぇ……見てみるか」
俺はそう言って、ゆっくりと日記を開いたのだった。




