表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/251

邪魔剣カルマ 3

 俺は思わずアニマを見てしまう。アニマもその質問が来ることはわかっていたようで、気まずそうな顔で剣を睨んだ。


「……誰でもないわ。ただの通りすがりよ」


 ……さすがにこの状況でその答えは無理があると思うが、言ってしまったものは仕方なかった。


 アニマとしてもさすがに苦々しい顔で剣を見ている。


「……フフッ。相変らず嘘が下手だな、アニマ。既にメンテから聞いて知っているぞ。お前、その人間のことを随分と気に入っているようじゃないか」


「人間じゃないわ。彼は魔女と人間のハーフよ……それに、キチンと魔法使いとしての認定も受けたわ」


 すると、剣は呆れたように大きくため息をついた。


「アニマ……言っただろう? 私達は人間よりも優れている。それにも拘らず今までずっと人間に虐げられてきたのだ。だからこそ、人間を滅ぼし、私達だけの世界を創造する必要がある……それなのに、半分人間の血が流れている奴と付き合うなんて可笑しな話じゃないか?」


 すると、剣はまたしても俺の方に眼を向ける。


「小僧。お前は一体どういうつもりだ?」


「え……な、なんだよ……」


「ダメよ、タイラー。話をしちゃ……」


 俺が返答しようとすると、アニマが小さく返事する。しかし、不思議なことに、俺は刀身の眼から目を反らすことができなかった。


「お前は知っているのか? 私達の痛みや苦しみ……知ったつもりになっているだけなのだろう?」


「え……それは……」


 まるで蛇に睨まれた蛙だった。何もできず、俺はただ邪魔眼の瞳を見ていることしかできなかった。


「教えてやろうか? 私達が受けた辛さや悲しみ……そして、痛みを……!」


 邪魔眼が怪しく光る……まるでそのままその蒼い炎のような瞳に飲み込まれてしまうような――


「タイラー!」


 と、思いっきりアニマにひっぱたかれて俺は我に返った。


「あ……な、なんだ?」


「フフッ……やはり片目では不十分か」


 剣が自嘲気味に笑っている。俺は何が起こったのか理解することすらできなかった。


「さて……メンテ。今日はもういい。アニマに再会できただけでも最高の一日だった。アニマと遊ぶのは……また今度にしよう」


 そういって刀身の邪魔眼はゆっくりと眼をつぶり、そのまま見えなくなった。


「……とのことです。良かったですね。カルマ様がお優しい方で」


 剣を手にしたメンテはそのまま俺たちに背を向ける。


「アニマ! メンテ放っておくの!?」


 俺が手にしていた本モードのフォルリが、似つかわしくない大きな声で叫ぶ。


 しかし、アニマは動こうとしない。


「……私には、メンテを止めることは……できないわ」


 アニマは心底悔しそうに、声を押し殺すようにそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ