アニマと黒炎竜 3
フレイアとアニマの後をついて教会に入ると、中も外と同様に完全に荒れ果てていた。
おそらく使われなくなって大分経つのだろう。とても神に祈りを捧げる場所という雰囲気ではなかった。
「……で、これから何が起こるんだ?」
俺がそう訊ねると、アニマとフレイアがゆっくりと振り返った。
「これから、アナタにお話をします」
と、辛辣な面持ちでいったのはフレイアだった。
「お話? 教会らしく、説法でもしてくれるんのか?」
「説法……いいえ。お話です。アナタにとっては御伽噺のような話、私とアニマにとっては思い出話です」
俺は思わずアニマを見る。アニマは気まずそうに目を伏せた。
「……なるほど。アニマの昔の話ってわけか。でもよぉ、それなら前みたいに日記で話してくれればいいじゃねぇか」
「……日記になんて書きたくないわ。あの時のこと……」
アニマは思い出すのも嫌そうな顔でそう言った。どうやら、アニマが相当したくない類の話らしい。
「なるほど。で、わざわざその話を自分の使い魔にさせようっていうのか?」
「ええ。アニマはこの話を1人でしたくないと言いました。だから、私がこうしてアナタに話すのです」
「……で、その話ってなんだよ?」
俺がそう訊ねると、アニマは辛そうにフレイアを見る。フレイアは小さく頷いてそれから、俺の方を見た。
「……ある1人の魔女の話です」
「魔女? なんだ? まだ認定を受けないといけないとか、そういう話なのか?」
「違うわ……魔法使いになるに当たって、アナタに知っておいてほしい魔女の話」
アニマはそう言う。いつになく真剣な調子だった。
「へぇ……なんでそんな魔女の話を聞く必要があるんだ? これから会うのか?」
「会わない方いいです。というか……タイラー様。アナタはきっと、遭った瞬間、後悔しますから」
フレイアのものいいもいい加減回りくどかった。俺はじれったいので話の本質に迫ることにした。
「……で、その魔女ってのは、一体誰なんだよ?」
すると、アニマとフレイアが目を併せてそれから、俺のことを悲しそうな目で見た。
「……『蒼炎の魔女』……カルマ・ヘルスタッフ」
荒れ果てた教会の中に、その名前は重々しく反響したのだった。




