土魔女と岩竜 4
「……で、コイツがそのレーナなのか?」
俺は半信半疑でアニマに訊ねた。
眠たそうに目を擦りながら大きく欠伸をする少女……服装はどう見てもパジャマだし、髪は腰まで届く程の長さで、あまり手入れをしていないように見える。
「ええ。『眠れる大地』の2つ名を持つ魔女、レーナ・ムーサよ」
眠れる大地……というか、眠たそうにしているだけにしか見えない。
アニマにしてもトリンデにしても、どこかしらなんというか……魔力を持つ者のオーラというものを感じたが、コイツはどうにもオーラも何も感じることができない。
「……ホントに強いのか?」
「失礼だねぇ、君……私だってアニマやフォルリと同じくらい強いよ? ふわぁ~」
そう言っている最中にも大きく欠伸をするレーナ。やはり強いようには見えない。
「……っていうか、コイツの使い魔はどこにいるんだ?」
「さぁ? さっき声は聞こえたのだけれど……」
そういってアニマはキョロキョロと辺りを見回す。
「ここだ。ここにいるぞ~」
と、部屋の隅に置かれていたソファから間延びした声が聞こえて来た。
見ると、ソファの影から片手がヒラヒラと動いているのが見える。
俺達はそのままソファに向かって近づいていく。そして、ソファの上を見ると、1人の少女がだらしなく横になっていた。
服はところどころはだけていて、短い髪もボサボサである。
「よぉ。私がレーナの使い魔の……ふわぁ。ネルトゥスだ。よろしくな」
俺は思わずフォルリを見てしまう。フォルリも困り顔で俺のことを見返してきた。
「さて……レーナ。ネルトゥス。悪いのだけれど、起きてくれるかしら? 私が前に頼んでいたように、タイラーに認定を与えてほしいのだけれど」
すると、ベッドの方で人影がムクリと起き上がった。レーナが気だるそうにしながらこちらに歩いてくる。
「認定……ああ。そんなこと言ってたね」
「ええ。認定、くれるわよね?」
「……タダで、というわけにはいかないなぁ」
と、だらしない笑顔をしながらレーナはそんなことを言った。予想外のことだったらしくアニマも少し戸惑っている。
「……何が望みなのかしら?」
すると、レーナはニヤリと俺の方を向いた。その瞬間、俺の頭にはあのお決まりの嫌な予感がよぎったのであった。




