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中古魔宝具販売店「マジック・ジャンク」  作者: 松戸京
魔法使いへの道 土の魔女編
178/251

黒猫の反乱 5

「さて……そろそろマジック・ジャンクに戻るか」


 俺がそう言うとヴィオはギクリとした顔で俺を見た。


「……え、か、帰るの? タイラー……」


「ああ。きっとフォルリもさすがに起きているだろうし……『本物』のアニマも起きているだろうからな」


 俺がそう言うとアニマはキョトンとした顔をした。そして、俺はアニマの近くにいって頭の上に乗っている帽子を取り上げた。


「あ……」


 帽子を取ると、頭の上には、2つ、黒猫の耳があった。


「……あのなぁ。変身するなら、もう少し上手くやれよ」


 俺がそう言うと、アニマは悲しそうに俺を見た。


「……ごめんなさい」


 そして、みるみる内にその姿は小さくなっていき、あっという間にヴィオの姿そのものに戻った。


「はぁ……で、なんでこんなことしたんだ?」


「……御主人様が、私のこと、どうでもいいって思っていると思って……」


「なるほど。それで、アニマに変身したわけか。っていうか、本物のアニマはどこだよ?」


「……地下室に寝かせておきました」


「寝かせた? アニマもフォルリと同じように気絶したのか?」


「ええ。私の……魔法です」


「え……お前、魔法使えるのか?」


「……1つだけです。『ネコダマシ』……猫の使い魔だけが使える魔法で、どんな相手でも気絶させることができます。同じ相手には二度と使えないですけど……」


 デメリットはあるものの、地味にすごい魔法を使えるのだと感心しながらも、俺は大きくため息をついた。


「で、お前は俺がお前のことを、どうでもいい存在だと思っていると?」


「……だって、私は成り行きで御主人様に押し付けられただけだし……御主人様だって迷惑しているんじゃ……」


 ヴィオが悲しそうにそういうのを見て。俺は今一度大きくため息をついた。


「ああ。そうだな。迷惑だ。でも、別にお前だけじゃねぇ。セピアやフォルリだって、お前と同じようなもんだよ。全部、アニマに押し付けられたんだ」


「……でも、その2人は一緒に暮らしているじゃないですか」


 不満そうにそういうヴィオ。言われてみれば確かにそうだ……ここは、もはや腹をくくるときなのかもしれない。


「……いいか。絶対に、猫のままの姿でいるんだぞ」


「え?」


 ヴィオはキョトンとした顔で俺を見る。


「……俺の家で飼ってやる。ただし、お前を黒猫として飼ってやるって意味だ。居候はこれ以上増やせないからな」


「ご、御主人様……!」


 嬉しそうにぱぁっと顔を輝かせるヴィオ。


「ただし! キンケイドの店で昼は働けよ。夜は家に帰ってきていいから……」


「はい!」


 そう言うと、ヴィオはいきなり俺に抱きついてきた。


「なっ……や、やめろ……そんな猫みたいにじゃれつくな……」


 ヴィオは嬉しそうに喉を鳴らしながら、俺に頭を擦りつけてきた。


「何言っているですか。私は、御主人様の使い魔で……飼い猫ですよ?」


 無邪気に微笑むヴィオ。こうして、俺はその日から黒猫を家で飼うことになったのであった。

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