魔法使いになる理由
「……で、ホントにトリンデには何もされなかったのね?」
マジック・ジャンクに戻ってきた俺はアニマとフォルリに睨みつけられながらそう問い詰められる。
「あ、ああ……何もされなかったよ」
「はぁ……全く。どうしてタイラーは変な女の子にばかり人気があるのかしらね……」
そういってアニマはチラリとフォルリのことを見る。
「同じ言葉、そのまま返す」
フォルリも同様にアニマのことを見ていた。
「えっと……っていうか、アレでよかったのか? 俺はトリンデから認定をもらえたんだよな?」
俺が半信半疑でそう訊ねると、アニマは小さく頷いた。
「ええ。だから、後1人の魔女から認定をもらえば、正式にタイラーは魔法使いよ」
「へぇ……で、ヴィオは?」
と、部屋の隅で小さくなっていたヴィオを見て俺は訊ねた。
「あ……え、えっと……はい。とりあえず、御主人様が倒れている間にフィヨルギュンさんからドラゴンの姿見せてもらったんで……」
「へぇ。じゃあ、もうドラゴンに変身できるのか?」
「え……いや~……後1人くらいドラゴンを見れば変身できるんじゃないかなぁ、って……」
気まずそうな顔でそういうヴィオ。本当に変身できるのか……俺は少し不安だった。
「まぁ、とにかく、今日はトリンデみたいな変人に付き合って疲れたでしょう? 家に帰ってゆっくりして。最後の魔女に会いに行くのは三日後にしましょう」
アニマにそう言われ、俺とフォルリ、そして、ヴィオは帰ることにした。
「……御主人様。ホントに魔法使いになりたいんですか?」
と、その道中、ヴィオが唐突に俺にそう訊いてきた。
「え……あー……まぁ、そういう流れになっているしな」
「なっ……なんですか。別になりたくないんですか……」
「いや。なりたくないわけではないぞ。確かにアニマに言われたからこそやっているが、俺はフォルリの所有者としてきちんとした魔法使いになるべきだって思うぜ」
俺がそう言うとフォルリは嬉しそうに目を細める。しかし、対照的にヴィオは不機嫌そうに頬をふくらませる。
「なんだよ。不満そうだな」
「……だって、御主人様。ヴィオのこと、全然気にしていないんですもん」
「え? お前のこと?」
俺がそう言うと、鋭い目つきでヴィオは俺のことを見る。
その目つきは、それこそ、不機嫌な時の猫そのものであった。
「どうぜ、御主人様はヴィオのこと、自分の使い魔だなんて思ってないんでしょ! ヴィオなんかよりアニマ様やフォルリ様の方が大事なんでしょ!」
「な、なんだよ、いきなり……」
そう言うとヴィオはベーッと舌を出して、そのまま俺とフォルリを置いてその場から走りだした。
「……御主人様なんか大嫌い! ヴィオのこと、大事だと思ってくれないならもう……御主人様の使い魔やめます!」
そういってヴィオはそのまま走って行ってしまった。
「……あ。これ、面倒くさい奴だな」
俺は苦笑いしながらフォルリを見る。フォルリも困り顔で小さく頷いたのだった。




