雷魔女と風竜 8
「さて……まず最初に聞かせてもらうが……君は本当に魔法が使えないのか?」
さっそくトリンデは俺に質問を始めた。アニマとフォルリ、そして、ヴィオは不安そうな顔で俺のことを見ている。
「ああ、使えないね」
俺はチラリと手の平を見る。電気は感じない……確かに真実を言えば電気は流れないようだ。
「なるほど。では、なぜ魔法使いになるんだい?」
「え……まぁ、その……アニマに言われたから……だな」
自分でもどうかと思ったが、それが本当なのだから仕方ない。
掌を見る。電気は流れない。
「そうか。まぁ、普通の人間は魔法使いになんてなりたいなんて思わないからね。つまり、君は魔法使いというものを正確には理解していないということだな」
「え……あ、まぁ……あんまり良く知らないな」
俺がそう言うとトリンデはなぜか嬉しそうに俺のことを見た。
「そうか……君は過去に戦争があったことは知っているね?」
「ああ、戦争ね……まぁ、事実としては知っている」
「だったら、その戦争の中で魔法使いや魔女が多くの人間を魔法で虐殺した……その事実は?」
トリンデの質問に俺は少し戸惑ってしまった。チラリとアニマとフォルリを見る。2人も渋い顔でトリンデを見ていた。
「……魔女や魔法使いが戦場に駆りだされたことは知っているが、虐殺したかどうかは知らないな」
電気は流れない。トリンデは表情を変えずに俺を見ている。
「……フッ。そうか。知らないか」
そう言うとトリンデは遠い昔を思い出すように目を細める。
「……迸る電流、轟く落雷、吹きすさぶ暴風……フィヨルギュン。私達はどれくらいの人間を虐殺したと思う?」
ふいにトリンデは隣に立っていたメイドに話しかけた。
「さぁ……覚えておりません」
フィヨルギュンはそっけなく答えた。その答えをきいてトリンデは嬉しそうに笑う。
「ああ。私も覚えていない。しかし、おそらく一国の国民の数程度なら殺しているだろうな」
そういってトリンデは俺を見た。
その瞬間、いきなりトリンデの身体が青白く光始めた。バチバチと音を立てて、小さな雷が身体から発せられているのがわかる。
「……フフッ。話をしていたらあの感覚を思い出してしまったよ。どうだい? タイラー。下手をすると、私は今君をここで殺してしまうかもしれない……君にとって、私は恐怖の対象かな?」
既に髪の毛が逆立ち、バチバチと音を立てて青白く発行するトリンデはまさしく「激昂する紫電」の2つ名にふさわしい容姿だった。




