雷魔女と風竜 5
フィヨルギュンと名乗ったメイドはそれから少し歩いて、トリンデの近くに立った。
使い魔……ということは、このメイドがドラゴンということになる。
しかし、ルサールカとは違い、ずいぶんと大人びた感じ……というか大人だ。
それにトリンデとは全く違うタイプの女だ……使い魔は別に主人と似た姿になるというわけではないのだろうか。
「さて……君の名前は?」
「え? あ、ああ。ジョセフ・タイラーだ」
俺がそんなことを考えていると、不意にトリンデが話しかけてきた。
「タイラー……なるほど。君は魔法使いだとアニマに聞いたが……本当かい?」
「いや、魔法使いと言っても、アニマやフォルリみたいに魔法は使えないぜ。今までだってアニアの店所手伝いをしたり、フォルリを使って魔法を出してみただけだ」
俺がありのままを言うと、1人で勝手にトリンデは頷いていた。
「……なるほど。つまり、アニマとフォルリからは絶大な信頼を得ているというわけだね」
俺は思わずアニマとフォルリを見てしまう。フォルリは恥ずかしそうに顔を反らし、アニマは不気味に俺に微笑んだ。
「……しかし、残念ながら私は君のことを信頼していない。会ったばかりだからね」
「まぁ、そりゃあそうだろうな」
俺がそう返事すると、トリンデはニッコリと微笑んだ。
「そう。だから、私が君を認定する条件はただ1つ。君が私が信頼するに足る人間かどうか、ということだ」
そう言うと、トリンデは立ち上がり、俺に手のひらを差し出してきた。
その中には小さな丸い物体があった。
「……これは?」
「今からこれで、君が信頼に足る人間かどうか、テストさせてもらうのさ」




