雷魔女と風竜 4
「はぁ……ひどい目に遭った……」
城の中に通されると、俺は思わずそう言ってしまった。
「フフッ。嵐は嫌いかな?」
俺がそういうのを聞き逃さなかったのか、トリンデはニッコリと笑いながらそう訊ねてくる。
明るい場所の下で見るとわかるが、トリンデの格好はアニマと異なっていた。
男性のようなピッタリと身体のラインを表すようなシャツとズボン……ただ、その色は上下共に黒で統一されていた。どうやら、魔女のカラーリングというのは黒と規定されているのかもしれないと、俺はなんとなく思った。
そして、当のトリンデ自身が、まるで男性のような精悍な顔つきなので、その格好がまるでどこかの執事のように、ピッタリと似合っているのである。
「……っていうか、なんなんだよ。この城は」
そして、俺はもう一つ気になっていたことを口にした。
城の中はまるで昼間のように明るかった。しかし、どこにも炎の気配はない。
天井にぶら下がっているのは、幾つもの小さなガラス球だった。その中に明るい球体が光っていて、城を明るく照らしているのである。
「ああ。これは電気というんだ。私の魔法……すなわち、雷の魔法の応用さ。この城にあるガラス球は、私の魔法で明るさを灯すことができる魔宝具なんだ」
誇らしげにそういうトリンデ。確かに近くで見ると、明るい球体はバチバチと音を立てているのがわかった。
「で、トリンデ。さっそく本題に入りたいんだけど」
と、アニマが唐突に口を開いた。
すると、トリンデはやれやれという感じで肩をすくめる。
「アニマ……君はいつも物事を急ぎすぎている。私のように嵐の音に聞き入るような余裕を持った方がいい」
「あのねぇ……今日のことはこの前ここを訪れた時にも話したはずよ。大体、私とアナタは十分話したでしょ?」
すると、トリンデはチッチッと指を降ってアニマを見る。さすがのアニマもいい加減痺れを切らしてきた感じである。
「アニマ……確かに、私と君はそうだ。しかし、私はこのタイラーという青年のことを全く知らない。1つ、私はタイラーと話してみたい。ああ、それと……君が使い魔かい?」
そういって、部屋の端で小さくなっていたヴィオを、トリンでは見る。
「え……あ、そ、そうです……」
「なるほど。では、私の使い魔も紹介しよう。フィヨルギュン!」
そういってトリンデが手を叩くと、俺達が通された部屋の扉が開いた。
「お呼びでしょうか。御主人様」
そういって出てきたのは、1人のメイドだった。眼鏡をかけ、短く切り揃えた黒い髪の毛は、どこか神経質そうな印象を与える。
「お客様だ。自己紹介をするといい」
トリンデがそう言うと、メイドは深々と頭を下げた。
「はじめまして。ワタクシ、トリンデ様の使い魔、風竜フィヨルギュンと申します。どうぞ、よろしくお願い致します」




