雷魔女と風竜 3
「ど、どうなってんだよ! アニマ!」
嵐にかき消されないように、俺は大声でアニマに問いただす。
「トリンデの趣味よ! あの子は嵐と落雷の音が大好きなのよ!」
アニマもこれまた大声で俺に返事する。
嵐と落雷が好き……この時点で変人であることはほぼ確定したようだった。
「で! そのトリンではどこにいるんだよ!?」
俺が再びそう怒鳴ると、アニマは前方を指さす。
すると、雷光がピカっと光った。そして、目の前に巨大な城のシルエットを一瞬だけ写しだしたのである。
「あそこ! あれがトリンデの城よ!」
少し距離はあるが、この嵐の中でも行けない距離ではない……これは覚悟を決めなければいけないようだった。
「わかった! 行こう!」
俺の返事に満足したようで、アニマは俺の手を握って歩き出した。
俺ももう一方の手でフォルリの手を握る。フォルリも必死に俺と、ヴィオの手を握っていた。
それから、嵐と雷光の中を暫く進む。顔に雨風がぶち当たり、なんとも嫌な気分になったが、それでも進んだ。
そして、ついに城の城門の前までやってきた。
「おい! 城門、閉まっているぞ!」
俺がアニマに見たままを言う。確かに、城門は固く閉ざされていた。
「……トリンデ! 私よ! アニマ!」
アニマが叫ぶ。しかし、返事はない。
「あの子! 耳が悪いの! フォルリも叫んで!」
アニマがそう言うとフォルリは頷いた。
「トリンデ! 私、フォルリ。アニマと一緒に来た!」
普段のフォルリからは想像できないほどの大声でそう叫ぶ。
すると、その時不思議なことが起こった。
「……え? 嵐が……」
まるで何かのスイッチが切れたかのように、嵐が突如として止んだのである。
「な、何がどうなってんだ……」
「いや、すまない。嵐の音に聞き入っていてね。気づくのが遅くなった」
と、どこからか声が聞こえて来た。見ると、既に城門は開いていた。
そして、その先に人影が見える。
「……まったく。いい加減にしてほしいわ。トリンデ」
「悪かったよ。アニマ。それに、フォルリ。久し振りだね」
そういって出てきたのは、1人の女性だった。
紫色という不思議な色の短い髪の毛、そして、男と見間違うほどに精悍な顔立ち……ただ、体つきはスラリと細く、女性らしい柔らかいシルエットであった。
「そして……君がアニマの推薦する魔法使い君だね? はじめまして。私はトリンデ。トリンデ・ブリュンヒルデだ」
トリンではそう言って俺にニッコリと笑ったのだった。




