雷魔女と風竜 2
「では、行くわよ」
そういってアニマは、地下室の扉のノブを握る。
「あのよぉ……なんで雨も降ってないのに雨具なんて着ていくんだ?」
さすがにいい加減気になっていたので、俺は思わずアニマとフォルリにたずねてしまった。
アニマは、件の魔女に会いに行く前に、絶対に雨具が必要だと言って、俺とヴィオ、そして、フォルリに雨具を着せてきたのである。
「そりゃあ……トリンデに逢うのに、雨具が必要だからよ」
「必要……ソイツが住んでいる場所は雨でも降っているのか」
「ええ。それも、とびきりすごい雨が降っているわ」
別に今の季節は雨季ではない……仮に、そのトリンデとやらが別の大陸に住んでいるなら話は違うが、アニマの知り合いならさすがにそこまで遠い場所には住んでいないはずである。
それなのに、こんな雨具を着ていく必要が俺には理解できなかった。
「……まぁ、とにかく実際に見てみればわかるわ。じゃあ、扉を開けるわよ」
そういってアニマは扉のノブに手をかけ、それをゆっくりと開いた。
その瞬間だった。
「きゃあっ!」
ヴィオの悲鳴が響いた。なんと、扉の向こうからものすごく強い風が吹き込んできたのである。
「いい!? しっかり互いに手を繋ぐのよ!」
そういってアニマは俺の手を握る。俺もフォルリの手を握った。
そのままアニマは扉を開いた。
「え……う、嘘だろ!?」
俺のつぶやきは、既にかき消されていた。
その理由は、扉の先に広がっていたのが、暴風と落雷が響く、ものすごい嵐のまっただ中だったからである。




