水魔女と水龍 8
「……はぁ」
俺はベッドに横になって天井を見上げる。
……なんだかアニマの思いつきでとんでもないことになってしまった。
とりあえずフォルリから認定もらえたのはいいが、明日からはフォルリ以外の魔女にも認定をもらわなければいけないのだ。
しかも、相手は魔女……俺は魔女という人種に関して、今までまともなヤツと会っていない。
早くも遭ってもいない魔女に、俺は不安を覚えてしまっていた。
「……明日から大丈夫なのかよ」
……っていうか。フォルリも言っていたが、アニマはどうしていきなり俺に魔法使いとしての資格を得た方が良いなんて言い出しのだろう。
今まではそんなこと言わなかった……それなのに、休暇から帰ってきたと思ったら急にそんなことを言い出した……何かアニマの中で思う所があったのだろうか。
「……まぁ、俺の知ったことじゃないが……少し気になるな」
「私も、気になる」
「うおっ!?」
と、いきなり聞こえて来た声に、俺は思わず頓狂な声をあげて驚いてしまった。
「あ……な、なんだ、フォルリ……いきなり出てくるなよ……っていうか、ノックしたか?」
「うん。した。タイラー、聞こえてなかっただけ」
「あ、ああ……まぁ、いいや。で、なんだよ?」
すると、フォルリはジッと俺の顔を覗きこむように見つめてくる。
綺麗な瞳でそんな風に見つめられると、俺としても少し恥ずかしかった。
「な……なんだよ」
「タイラー。ルサールカ、何か言ってた?」
「え……あ、ああ。えっと……なんか俺、アイツと仮契約? みたいなのさせられたぞ?」
俺がそう言うとフォルリはキョトンとしていた。しかし、しばらくすると、少し困ったような顔で俺のことを見た。
「……タイラー。仮とはいえ……あまり適当に契約、しない方がいい」
「え……あ、ああ。そうだな……すまん」
「……でも、ルサールカも、タイラーのこと、守りたいと思っている。私と同じ気持ち」
そして、フォルリはさらに俺に顔を近づけてきた。さすがに近すぎたので、今度は俺が少し身体を後ろに下げなければいけなかった。
「な……なんだよ……」
「タイラー……アニマがタイラーを危険な目に遭わせても、私、全力でタイラーのこと、守るから」
フォルリの顔は真剣だった。しかし、なんだか俺にはそんな風に真剣な顔をしているフォルリが少し可愛らしく思えてしまった。
「……ああ、ありがとう」
思わず微笑んでそう言うと、フォルリの顔が真っ赤になった。そして、慌てて俺から距離を取る。
「と、とにかく……私のこと、信じて」
「ああ、信用しているよ。大体、俺はお前に住む場所を提供してやっているんだ。その礼はキチンとしてもらわないとな」
俺がそう言うと、フォルリは少し恥ずかしそうにしながら、小さく頷いた。
「よし。これからも頼むぞ。俺の魔宝書さん」
「……うん。私の所有者さん」




