水魔女と水龍 7
「……で、俺にしておいた方がいい話って、なんだよ?」
部屋に行くと、ジッと青い瞳でルサールカは俺のことを見た。
それこそ、まるで俺を値踏みしているかのような目つきで、なんだかあまり気持ちのよいものではなかった。
「……えっと、聞いているか?」
「聞いている。アナタに、1つ、提案、ある」
「提案? なんだよ」
そう言うとルサールカはキッと眼を鋭くして俺のことを見る。
「……私と、仮契約してほしい」
「……え? 仮契約?」
いきなり飛び出てきた言葉に、俺は動揺してしまった。
契約という言葉も予想外だったが、それに仮がついていると、益々予想外である。
「えっと……仮契約ってなんだ?」
「……正式な使い魔になることではなく、一時的に力を貸し与えられる状態にすること……それが、仮契約」
「へぇ……で、なんで俺と仮契約なんてするんだよ?」
俺がそう言うと、ルサールカは厳しい目つきで俺のことを見る。
「フォルリのこと、心配。アナタ、未熟。よって、ピンチの時、私の力を一度だけ使用できるようにしたい」
「ああ……なるほどね。確かにそれはそうか」
使い魔としては主人が俺に使役される存在である以上、確かに俺自身の行動によってはフォルリさえも危険に晒すことになるのだ。ルサールカの言っていることは最もだ。
「それなら賛成だ。で、仮契約ってのはどうやるんだ?」
「簡単。私と契約すると言えば良い」
「え……えっと、俺は水龍ルサールカと契約する……こんなんでいいのか?」
ルサールカは小さく頷いた。なんともあまりにも簡単すぎる方法である。
「こんなんで本当に大丈夫なのかよ……」
「大丈夫。私は、アナタのこと、未熟だと思っている。だけど、信用に足る人間だとは思う」
「へぇ……なんで?」
すると、今まで仏頂面だったルサールカがにやりと微笑んだ。
「フォルリがアナタのこと、信用している。それは、まぎれもなく、アナタが信頼できる人間であることの、証明」
そう言うと、ルサールカは部屋からそのまま出て行ったのだった。




