水魔女と水龍 5
「お、おお……」
間近で見ると、水龍ルサールカは、まさに幻想的な存在だった。
青い鱗に覆われたその体表は、まるで水が常時流れているかのように潤っていた。
そして、その青い瞳は、人間体の時とは違い、優しさにあふれた温かさを感じさせる。
「……で、どうかしら? 子猫ちゃん」
「え? わ、私ですか?」
と、アニマがヴィオに訊ねる。ヴィオは俺と同様に、ルサールカの神秘的な姿に心を奪われていたらしい。
「え、えっと……すごい、としか言えませんね……」
ヴィオがそんなどうしようもない答えを言うと、アニマは苦笑いした。
「ふふっ……まぁ、ドラゴンをはじめに見た時はそんなものよね。でも、私の使い魔だってルサールカに負けてないわよ」
それを聞いて、俺は思い出した。
そうだ……アニマも確かルサールカのようなドラゴンを使役していたのだ。
それも、口から炎を吐く、巨大な竜……
「さて……それじゃあ、ルサールカ。この子猫ちゃんを、タイラーの使い魔として認めてあげてくれるかしら?」
アニマがそう言うと、またしてもルサールカは身体を水のように変化させ、あっという間に人間の姿に戻った。
「……その子、アナタの使い魔?」
と、またしてもルサールカは、俺のことを睨みつけながらそう訊ねて来た。
「あ……ああ。そうだ」
「……なら、認めてあげる。フォルリのために、正式な魔法使いになってほしいし」
「へ……?」
ルサールカがそう言うと、フォルリはまたしても顔を真っ赤にしていた。
「じゃあ、これで認定完了というわけね」
アニマがそう言うとルサールカは頷いた。
「ふふっ。良かったわね。タイラー。これで、魔法使いへの道を第一歩を踏み出したわよ」
アニマは満足そうにそう言った。一方の俺としてはあまりその実感がなく、不思議な気分だったのだが。




