水魔女と水龍 4
「え……これが……ルサールカ?」
俺は思わずアニマの方を向いて、そう訊いてしまった。
フォルリに似ているといっても、それは雰囲気だけだ。
美しい青い髪に、冷たい感じさえする青い瞳……ちょっと普通の女の子とは思えない容姿は、さすがに本モードのフォルリの中から出てきただけのことはある、といった感じだった。
「……さぁ。フォルリ。そうなの?」
アニマがそう訊ねると、俺が持っていた本の姿のフォルリは変化し、人間の姿に戻った。
「そう。その子、ルサールカ」
フォルリは特に動じる様子もなくそういった。フォルリが人間に戻ると、ルサールカはフォルリの影に隠れた。
「へぇ……ドラゴンって人間になれるのか」
「ええ、そうよ。別にルサールカが特別ってわけじゃないわ」
アニマはそういってまるで常識のようにそういう。俺にとってはいきなり本から人間が現れている時点でかなり驚きなのだが。
「それはそうと、ルサールカ。早くドラゴンの姿になってくれるかしら? 子猫ちゃんにドラゴンがどういう姿をしているか見せてあげないと」
アニマがそう言うと、フォルリの影に隠れていたルサールカは、窺うようにフォルリの事を見る。
「ルサールカ。お願い」
フォルリがそう言うと、ルサールカはフォルリの影から出てきた。
「……1つ、聞きたいことある」
と、なぜかルサールカは俺の前に出てきて、鋭い目つきで俺のことを見た。
「あ、ああ。なんだ?」
「……アナタ、フォルリのこと、どう思っているの?」
「……へ?」
俺が困惑していると、なぜかフォルリの方が顔を真っ赤にしてルサールカに近づいていった。
「ルサールカ……余計なこと、言わないで」
「でも、フォルリ……アナタは、言いたいことをはっきり言わない性格……ここではっきりさせるべき」
2人はなぜか小声で言い争っているようだった。俺にはどうして突然言い争い始めたのかよくわからなかったが……
「フォルリ。その……ルサールカ、ドラゴンになってくれないの?」
アニマの少しイラ付いた調子の声で、フォルリは我に返ったようだった。恥ずかしそうにしながら俺のことを見る。
「あ……ルサールカ。お願い」
フォルリがそう言うと、ルサールカは呆れたように大きくため息をついた。そして、次の瞬間には、少女の身体は一瞬にして水のような状態になった。
さらにそれがどんどん巨大化していったかと思うと……あっという間に、前に俺が見たような青い肌の巨大な竜の姿になったのだった。




