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魔女の帰還

「そう。メンテが、ねぇ……」


 メンテがマジック・ジャンクを訪れてから、三日後のことだった。


 アニマは、まるで近くの街の買い物から帰ってきたかのように、唐突に何事もなかったかのように帰ってきた。


 俺は、マジック・ジャンクでいつものように店番をしていた時だった。


 何か変わったことはなかったかと聞かれて、即座にメンテの話をしたのである。


 アニマにその話をすると、あまり驚いた様子も見せなかった。


 ただ、悲しそうな目つきで俺の話を聞いているだけだった。


「……アイツ、なんかとんでもないこと言ってたぞ」


「とんでもないこと? 世界を滅ぼすとか?」


「え……まぁ、そんな感じ」


「ふぅ……別にいつも言っているわよ。メンテの口癖みたいなものよ」


 特に動じることもなく、アニマはそう言った。


「あ……後、目玉」


「目玉?」


 俺はあまり思い出したくなかったが、アニマにあの目玉の話をすることにした。


「ああ……青い瞳の目玉だ……なんというか……すごく不気味な目玉だった」


「……それ、メンテが持っていたの?」


 と、アニマの顔つきが変わった。細い目つきを一層鋭くして、いつになく真剣な顔つきで見ている。


 思わず俺もアニマにそんな風に見られて戸惑ってしまう。


「あ……ああ。青い瞳だった。なんというか……青い炎が燃え上がっているような不気味な瞳だ……」


 俺がそう言うとアニマはうーんと深く唸った。やはりメンテは何かヤバイ魔宝具を発明したのだろうか?


「……それで、メンテはそれだけを持っていたの?」


「え? あ、ああ。目玉だけだったけど……それが何か?」


 すると、アニマは大きくため息をついた。


「……そう。だったら、大丈夫よ。目玉だけなら、ね」


「え……でも、身体を探しているとかなんとか言ってたぞ?」


「身体……ええ。そうね。もしかすると、あの子ならそれさえも可能にしてしまうかもしれないけど……それは絶対に不可能な話よ……それより」


 アニマはそういってジッと俺のコことを見てきた。先程ジッと見てきてはいるが、先程とは違う目つきだった。


「な……なんだよ」


「アナタ……フォルリにキスしたでしょ?」


 それを聞いて、やはり見ていたか、と俺は最悪の気分になった。


「あ……あれはだな……仕方なかったんだ。フォルリが変な魔宝具を身につけちゃって……」


「ええ。それは見ていたから知っているわ。問題は、アナタがフォルリにキスをしたという事実なのよ」


「はぁ? だ、だから仕方ないって言っているだろ……」


「へぇ……でも、嫌じゃなかったんでしょ?」


 そう言われて俺は返事に困ってしまった。そりゃあ、嫌ではなかったが……ここでの返事によってアニマの機嫌は大きく変化することは俺にはよくわかっていた。


「あ……えっと……まぁ……フォルリには世話になっているから……な?」


「……なにそれ。フォルリには世話になっているけど、私にはなっていないって言いたいわけ?」


「い、いや……そういうわけじゃねぇんだけど……」


 俺がしどろもどろになっていると、急にニンマリと嬉しそうにアニマは微笑んだ。


「……ふふっ。1人でいるとリラックスできるけど、やっぱりタイラーをからかっている時が一番楽しいわね」


「は……はぁ? お前なぁ……」


 その悪戯っぽく笑う表情を見ていると、兎にも角にも、アニマ・オールドカースルという魔女が帰ってきたのだということを実感することができたのだった。

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