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希望の種(前編)

「微かな希望は、絶望を招く。だったら常に絶望していた方が楽だな」


――熟練の兵士

「ん? なんだ。アニマ。そんな帽子なんて被って」


 昼頃、『マジック・ジャンク』に来ると、アニマはいつもと様子が違っていた。


 丈の高い黒い帽子を被って、首には、毛皮を巻いている。


 なんというか……いつもより胡散臭い格好でまさしく「魔女」という感じだった。


「ああ、タイラー。私これから出かけるの。だから、相手できないわ。ごめんなさいね」


「へぇ。どこに行くんだ?」


「北部の村よ。名前は知らないわ」


「はぁ? なんじゃそりゃ?」


 俺がそういうとアニマは面倒くさそうに俺の方を見た。


「頼まれたのよ。『マジック・ジャンク』まで買いに来られないから、届けに来てくれ、って」


「届けにって……行けるのかよ?」


「ええ。心配いらないわ。私は行くから。じゃあね」


「あ……ま、待てよ。俺も行くぜ」


 と、あまり考えずに俺は勢いでそう言ってしまった。


 アニマは怪訝そうな顔で俺を見る。


「……どうして? 別について来てなんて言ってないわよ」


「あのなぁ……暇だからに決まってんだろ? まぁ……先日博打で金も無くなったし、やることもないからな」


 俺の言葉に呆れながらも、アニマは特に嫌がる素振りも見せなかった。


「じゃあ、この袋、持ってきて」


 と言って、アニマは俺に袋を手渡してきた。なにやら少し重い袋だ。


「中身はなんだ?」


「種よ。植物の種」


「へぇ。これを届けるのか?」


「ええ。さぁ、行くわよ」


 そういってアニマは店の奥に入っていった。


「おい、出かけるんじゃないのか?」


「そうよ。出かけるの」


 そのまま店の奥に入っていく。


 と、いきなりしゃがんだかと思うと、なにやら床をトントンといきなり叩いた。


 すると、床の一部分がいきなり開いた。その先には階段が続いている。


 俺は驚きのあまり何も言わずにアニマの後をついていった。階段はあまり長くなく、しばらくすると、目の前に扉が表れた。


「なんだこれ?」


「なんだ、って。見ての通り扉よ。これで村まで行くの」


「……はぁ? マジで言っているのか?」


「ええ。魔法を使えば、簡単に行けるわね」


 すると、アニマはドアノブを握りながら目を閉じ、何かブツブツとつぶやいていた。


 そして、扉を開けた。


「さぁ、来て」


 俺はそのまま扉の先へと進む。


「……はぁ?」


 と、その先に進んで思わずポカンとしてしまった。


 そこは、誰かの家だったのだ。


 目の前には、椅子に座った初老の男性が、俺と同じように目を丸くしている。


「ほら、着いたでしょ」


 アニマはあたりまえだという感じで戸惑う俺を無視して、椅子に座った老人の方に進んでいく。


「アナタが、村長さん? 私に手紙をくれたでしょ?」


「あ……え、ええ。えっと……」


「アニマよ。アニマ・オールドカースル。『マジック・ジャンク』の店長よ」


「あ、ああ……魔女様でしたか」


 それを聞いて、男性は俺達の登場の仕方に納得したらしく、俺達に椅子に座るように勧めた。


「いえ、結構よ。ほら、タイラー。袋を見せて」


「え? ああ」


 俺はそういって男性に袋を渡した。男性は不思議そうに袋の中身を見ている。


「……これが、そうなのですか?」


「ええ。見た目は普通の種だけど、立派な魔宝具よ」


 それを聞いて俺は嫌な予感がした。


 ……魔宝具ってことは、おそらく普通の代物ではないのだろう。


「しかし……どのように使えば?」


「簡単よ。外に畑はある?」


 すると、暗い顔で村長は頷いた。


 アニマと俺はそのまま外に出た。


「え……なんだこれ」


 外に出て俺は思わず絶句してしまった。


 そこには、言葉を失う光景が広がっていたからである。

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