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邪魔眼(前編)

「あ~……ったく。今日もどうせ帰ってこねぇんだろうなぁ……ふわぁ」


 大きな欠伸をしながら、俺はベッドから起き上がる。


 マジック・ジャンクの店番代行も早いもので既にそれなりの期間が経過した。


 客が来ないのは相変らずであるが、アニマが帰ってこないのは問題である。


 まったく。いつになったらアニマは帰ってくるのだろうか。


「それにしても……客が来ないからホント暇で仕方ない……な?」


 店先まで出て俺は驚いた。


 1人、商品を食い入るように見つめている人物が立っていたのである。


「……え? 客?」


 俺が驚いていると、その人物はこちらに振り返った。


「あ……お前……」


 ボサボサの髪に不健康そうな目の下のクマ……何よりアニマと同じようにどことなく胡散臭そうな感じのソイツを、俺は知っていた。


「ああ……君か」


 ぎこちなく笑みを浮かべるその顔……


「お前……メンテか」


「ああ……久しぶりだね……」


 そういって笑みを浮かべるメンテ・デメーテールは、俺の記憶の通りに不気味な笑顔を浮かべていた。


「お前……どの面下げてやってきてんだよ」


 俺は警戒しつつも、メンテにそう訊ねる。


「どの面……ああ、僕がアニマ先輩を殺そうとしたことを気にしているのかい?」


 メンテの言う通り、以前、アニマはメンテの作った魔宝具によって、危うく殺されそうになっていたのだ。


「そうだよ。それなのに、よくここに来られたもんだな」


「ヒヒヒ……どうせ、あんな魔宝具じゃ、アニマ先輩を殺せないことはわかっていたからね……それはそうと、アニマ先輩はどこだい?」


「え……ああ、出かけてるけど」


 俺がそういうと、メンテはキョトンとした顔で俺のことを見た。


「出かけている? お店は誰が面倒見ているんだい?」


「俺だよ。アイツ、俺に店を押し付けやがって……適当なやつだぜ」


 俺がそういうと、なぜかメンテは何故か顔を下に向けて、怒っているかのようにプルプルと震えていた。


「……え? な、なんだよ」


「君……アニマ先輩に店を任されてっていうのかい?」


「え……あ、ああ。まぁ……それがどうした?」


「……君は、ホントにアニマ先輩に気に入られているんだね……何も知らないくせに」


 吐き捨てるようにメンテは俺にそう言う。そんな風に言われれば、俺もあまり気を良くしないものである。


「あ……えっと、お前、アニマと何かあったんだよな」


 俺はそう言いながら、かつてアニマに見せられた日記のことを思い出していた。


 メンテは鋭い目つきで俺のことを見る。


「……アニマ先輩に何を言われたのか知らないけど、君はあくまで知識としてそれを持っているだけだ。本当に知らなくてはいけないことを君は知らないし、アニマ先輩も教えてくれないだろう」


「はぁ? ったく……あのなぁ。俺は知らないことは知らないでOKってスタンスなの。大体、アニマが俺に教えようとしないことなんて、俺だって知りたくねぇよ」


 俺がそういうと、メンテはまたしても不機嫌そうに顔を歪めている。なんとも、アニマの元弟子というだけあって、面倒臭いやつである。


「……へぇ。そうか。じゃあ、教えてあげようか。君が知り得ないことを」


 そういってメンテは懐から何かを取り出してきた。


「……なんだ。また、魔宝具か?」


「ああ……これは、僕の最高傑作だよ」


 そういってメンテが取り出したのは……青い瞳の目玉だったのである。

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