重いペンダント 5
「……で、あのペンダントはなんだったんだ?」
「ん? なんの話じゃ?」
次の日。散々な気分で目を覚ました俺は、セピアに詰め寄っていた。
「だから……フォルリがつけてた青い宝石のペンダントだよ。どういう魔宝具だったのか聞いているんだ」
「ああ。あれか。言ったじゃろう。『重いペンダント』じゃと」
「……だから、それがどういうものか聞いているんだ」
俺がイラつき気味に沿う言うと、セピアはわざとらしく大きくため息をついてみせた。
「……簡単に言えば、あれは『重い』ペンダントであり、『思い』ペンダントなのじゃよ。あのペンダントを持てるのは、誰かに対して『思い』を抱いている物だけなのじゃ」
「え……じゃあ……」
「そうじゃ。それ以外の人間には重くて持つこともできぬ。しかし、思いを持った物があのペンダントを身につけると、その思いが増幅され、さらに重いものになる……そういう魔宝具なんじゃよ」
「なるほど……だから、フォルリは……」
俺はフォルリのこれまでの言動が、魔宝具によるものだということをようやく理解した。だが、ということは、フォルリは俺に対して「思い」を持っていたということになるのか……
「で、フォルリと何かあったのか?」
「え……な、なんでだよ?」
「当たり前じゃ。『重いペンダント』はそもそも、内気な女子が、男性に思いを伝えるために使う魔宝具……もっとも、それが暴走して厄介なことになることもあるのじゃが……」
「え……どういうことだよ?」
「思いが重すぎる場合があってのぉ……つまりはそういうことじゃ」
セピアがそういうと、俺は思わず嫌な気分になった。
フォルリに限って……いや、でも、俺は昨日フォルリと……
「タイラー」
と、店の奥からフォルリが顔をのぞかせた。
「え……な、なんだ? フォルリ……」
思わず引きつってしまいながらも、俺は笑顔でフォルリに返す。
「お茶、いる?」
嬉しそうな顔でフォルリは俺に訊いてきた。
「あ、ああ。よろしく……」
俺がそう返事すると、フォルリはニッコリと俺に微笑む。
その首元には青い宝石が煌やいていた。
「ふむ……まぁ、フォルリには丁度良いものかもしれんのぉ」
と、腕組みをしながら、セピアは勝手に1人で頷いていた。
「え……あのペンダントが?」
「そうじゃ。あの宝石も魔宝石の1つじゃ。思いが強くなれば魔法も強くなるしのぉ……それに、あの店主と主を取り合うのなら、フォルリにはもう少し積極性を……どうしたんじゃ、主よ」
「え、あ、ああ……積極性ね……」
セピアの話を聞きながら、俺は昨日、本モードのフォルリの表紙に口づけしてしまったことを思い出し、めちゃくちゃ恥ずかしい気分になっていたのだった。




