重いペンダント 3
「タイラー。起きてる?」
「……ああ、起きてるよ」
結局、俺はその日、マジック・ジャンクのベッドで本を抱えながら眠りについていた。
本というのは、もちろん、フォルリが本になった状態のことである。
「フフッ……なんだか、不思議な気分」
「あ? 何がだよ?」
「……まるで、恋人みたい」
嬉しそうな感じでそういうフォルリ。
「え……そ、そうか……まぁ、そうか……」
「……タイラー。私、こんなことするの、タイラー、だけ。本の状態で魔法使わせるのも、タイラー、だけ」
「え……あ、ああ。そうなのか」
「うん……だから、私のこと、捨てないで、ほしい」
……重い。
なんだ。これは。この展開は。
フォルリはこんなこと言うタイプじゃなかったはずだ。それが今や、ものすごく面倒というか……重い感じになっている。
「……ねぇ、タイラー」
「……なんだよ。もう、寝ろよ」
「……このまま人間の姿に戻っていい?」
「はぁ!? だ、ダメに決まってんだろ! それじゃあ……」
俺がそういうとフォルリは黙ってしまった。それからあまりにも長い間沈黙しているので、さすがに心配になってくる。
「……フォルリ?」
「……じゃあ、証、ほしい」
「え? 証?」
「うん。タイラーが、私のこと、好きな証」
「え……ちょ、ちょっと待てよ。好きって……」
「タイラー、私のこと、好きじゃない?」
不安そうな声で、フォルリは俺にそう訊ねてくる。
そう聞かれてしまうと、さすがに俺も「違う」とは言えなくなってしまった。
「どうなの?」
「え、あ……す、好きだぞ。お前には色々助けてもらっているし……感謝してるさ」
「……だったら、証、欲しい」
「だから……証ってなんだよ」
俺がそう訊ねると、しばらくフォルリはまた黙ったままだった。
「おい、フォルリ?」
「……キス」
「え……なんだって?」
「……私の、表紙に、キス、してほしい」
本の状態のフォルリから聞こえて来たのは、そんな衝撃的な言葉だった。




