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代替召喚書 5

「いや~、アニマが作ってくれた料理は美味しかったなぁ」


 その日の夜。アニマは本当に俺のために料理を創ってくれた。


 おそらく本物のアニマが絶対やってくれなそうなことであるが……料理がうまかったので俺は特に気にしなかった。


「そう。それは、よかった」


 嬉しそうにそういう代替アニマ。


 ここまで来るとどうにも代替品の方がいいような気がしてくるが……こんなことを言えば本物のアニマにとんでもない目に合わされそうである。


「タイラー、お茶、どうぞ」


 そういって代替アニマは俺にお茶までくれた。


「いやぁ、悪いなぁ」


 そういって俺はためらわずお茶を口に運ぶ。そして、しばらくすると……なぜだか急に身体が重く感じた。


「……ん? なんだ……身体が……」


 俺はそのまま椅子から立てなくなってしまった。目だけを動かすと、代替アニマはニッコリと微笑んでいる。


「え……お前……」


「成功、タイラー、もう動けない」


 嬉しそうにそういって俺の方に近づいてくる代替アニマ。


 ヤバイ。直感的にそう思った。


「ごめん、でも、代替品の私に、必要なこと」


 そういって代替アニマはなぜか俺の顔を掴み、そのままアニマ自身の唇を近づけてくる。


「止まれ!」


 と、急にそんな大きな声が聞こえて来た。またしても目だけ動かすと、そこにいたのは……


「ふぉ……フォルリ」


「我等もおるぞ」


 と、セピアとフォルリがそこに立っていた。


 代替アニマは、フォルリが止まれといった時から完全に静止していた。


「え……な、なにこれ……」


「やれやれ……これは痺れ薬でも盛られたかのぉ……だからこの魔宝具は微妙な魔宝具なのじゃ」


 そういってセピアは大きくため息をつく。


 そして、そのままフォルリはいきなり代替アニマの額に指を当てると、何やら額に紙切れのようなものが浮かんできた。


「……失敗。もうやめる」


 そういってフォルリは額に浮かび上がった紙切れを思いっきり引き剥がした。


 それと共に代替アニマはいきなり土塊のように成ったかと思うと、そのまま粉々になってしまった。


「お、おお……」


「……とまぁ、召喚された代替品は人間に近づくために、人間の体液を必要とするのじゃよ」


 ニヤニヤしながらそういうセピア。


「え……じゃあ……」


「そうじゃ。ま、召喚主としては、主の唇を奪われるのが我慢ならなかったのじゃろうな。のぉ、フォルリ」


「うるさい!」


 そういってフォルリはそのまま店から出て行ってしまった。


「そういうことじゃ、しばらくは自身の鈍感さを呪ってそのままでいることじゃな」


 そして、セピアまでもそのまま店の外に出て行ってしまったのだ。相変らず椅子の上から動けない俺を残して。


「え、ちょっと……お、おーい! 待ってくれ! 助けてくれよ~!」

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