代替召喚書 2
「代替召喚書? どうしてそんな魔宝具を使うんじゃ?」
「え……いや、だって、フォルリが……」
市場に向かう途中、セピアに訊ねられた俺は、どうして俺が市場に行くのかを、ありのままに説明した。
「なるほどのぉ……フォルリの奴、どういうつもりなじゃ」
「……え。もしかして、危険な魔宝具なのか?」
「まぁ……人によっては危険な魔宝具と、我等は思うぞ。ただ、主にとってはどうかわからんが……」
セピアは意味深な言い方をした。
俺は結局その言葉の意味がよくわからなかったが、セピアに言われたとおりのものを市場で買うことにした。
塩と胡椒、そして、いらなくなった金属類、さらに、二袋分の大きな粘土を買うことが、フォルリが渡した紙切れには示されていたのである。
「……ったく、他はいいとしても……なんだよ、粘土って」
「まぁ、粘土が一番重要だからのぉ。人によってはこれに一番拘るらしいと聞くがのぉ」
「はぁ? これで何するってんだよ……」
俺はいまいち理解できないまま、買い物を終えたセピアと共にマジック・ジャンクに戻ってきた。
店に戻ると、真剣に何かの本を読んでいたフォルリが椅子に座って俺達を待っていた。
「おい、フォルリ、買ってきたぞ」
「あ……お帰り、タイラー」
「で……こんな大量の粘土とガラクタ、何に使うんだよ」
すると、フォルリは俺が買ってきたものをよくよく見た後で、なぜか一人で勝手に頷いていた。
「……これなら、良し。店の外で作業する」
そういってフォルリは店の外で何やら謎の作業を始めた。
まず、店の外に魔法陣らしきものを書き、さらにその中心部に金属や何やらガラクタ類、そして、粘土を盛大にばら撒いた。
「……あれで、アニマが召喚できるのか?」
一緒に見ていたセピアに、俺は思わず訪ねてしまった。
「ふむ。正確には代替召喚書は召喚ではないのじゃ。むしろ、創造、といった方が正しいのぉ」
そして、フォルリは魔法陣の中心に金属と粘土を固めると、その上でなぜか塩と胡椒をふりかけていた。
傍から見ると完全に異様な光景であるが、ある意味では謎の儀式にも見えた。
「よし。タイラー、私の髪、一本抜いて」
すると、フォルリはこちらに戻ってきて俺にそう言った。
「え……いいのか?」
「うん。大丈夫。抜いて」
俺は言われるままに、フォルリの長い髪の毛を一本抜いた。
そして、フォルリは俺が抜いた髪の毛を一本手にとった後、なぜか紙切れに「アニマ・オールドカースル」という名前を書き込んだ。
「これ、重要」
そして、今度こそ、そのまま魔法陣の中心に向かっていった。
「準備完了。儀式、開始」
そういってフォルリは召喚魔法書を開いた。
何やらブツブツと呪文をつぶやくと、魔法陣の中心の謎の物体がなぜか怪しく輝き始めた。
そして、ひときわ輝きをましたかと思った次の瞬間、大きな煙を上げた。
「……やったのか?」
俺がそういって目を凝らすと、煙の先に何やら人の影らしものが見えた。
「……あ」
俺は思わずその先を見て驚いた。
「……アニマ?」
その先にいたのは、何やら非常にアニマに似た感じの美女が立っていたのである。




