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思い出の終わり

「……そう。やっぱり、私、取り憑かれちゃったのね」


 俺の屋敷が燃え上がってから一週間ほど。


 マジック・ジャンクで、俺とアニマはその時のことに関して話していた。


 アニマは既に大分回復していたが、あの屋敷での出来事があってから、しばらくは調子が悪そうだった。


「ああ。ったく……背負って帰ってきたのは俺なんだぜ」


「そう……悪かったわね」


 アニマは悲しそうに俺にそう言った。なんだか調子が狂ってしまう。


「なんだよ、お前らしくないな」


 俺がそういうと、アニマは大きくため息をついた。


「……ずっと、見ていたのよ」


「え? 何をだよ?」


「……小さい男の子の夢。あの魔宝書を手にして、気を失ってからずっと見せられていた、と言った方が正しいわね」


「見せられた……それって……」


 俺が最後まで言い終わらない内に、アニマは小さく頷いた。


「……小さな男の子が自分の方にゆっくりと歩いてくるシーン。その他にも色々……延々とそんな光景を見せられて……だから、私としても、本当に正しかったのか、と思っているのよ」


「正しかった? 何が?」


 俺が訊ねると、アニマは少し恥ずかしそうに俺を観る。


「……元の私に戻ってしまったことよ。あのままお母様に身体を明け渡すべきだったんじゃないか、って」


「はぁ? お前なぁ……」


 俺は呆れて何も言えなくなってしまった。しばらくの沈黙のあと、俺はわざとらしく大きくため息をついた。


「まったく……魔女っていうのはホントに面倒な人種だってことは、今回のことで確信したよ。なにせ、肉親でさえ面倒だったんだからな」


「タイラー……」


 俺はそう言ってから、少し髪の毛をかきむしって、アニマを見る。


「……キンケイドにも聞いたよ。やはり、ウチには父さんなんてのはいなかったんだと。ひでぇ話だと思ったよ……でもよぉ、もういいんだ。あれは俺の過去だった……過去はお前の炎で綺麗さっぱりなくなったんだ」


 俺がそう言うとアニマは何も言わずにただ俺のことをジッと見ていた。


「……とにかく! もうこの話は終わりだ。今日来たのは、どうせ、お前のことだ。あんだけのことをしてやったんだから、何か対価をよこせ、って言ってくると思ったからだよ」


 俺がそう言うと、アニマはキョトンとして俺を観る。


「それって……何かしてくれるってこと?」


「……仕方ねぇだろ。俺は『今は』あんまり金がねぇんだ。お前に何かしてやるくらいしかできねぇぞ?」


 そう言うと、アニマは嬉しそうに顔を和らげた。俺もなんとなく安心してしまった。


「そう。それじゃあ……1つ頼み事、聞いてくれる?」

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