別れの言葉 6
「あ! 御主人様!」
玄関まで戻ると、そこにはヴィオ、セピア、フォルリの3人が心配そうに俺のことを見ていた。
「どうしたんじゃ? なんでいきなり火の手が上がっておるんじゃ?」
セピアが俺に不思議そうに訊いてくる。
「……説明は後だ。とにかく、さっさとこの屋敷から出るぞ」
俺達はそのまま玄関の扉を開け、外に出た。
外に出てみると、黒い炎は完全に屋敷全体に燃え移っており、屋敷から大きな炎が燃え上がっていた。
「屋敷……燃えちゃった……」
フォルリが心配そうに俺のことを観る。
俺はその視線に気付いて、フォルリに向かって口の端を曲げて笑ってみる。
「……この屋敷は元から嫌いだったんだ」
俺はそういって今一度炎上する自分の我が家を見る。
実際、自分でも不思議なほどに悲しくなかった。
それは、別に母さんがアニマにあんなことをしたから、とかいうわけでもない。
なんというか……長い呪縛から解き放たれた……そんな感じだったのである。
「……これで、御主人様の問題は解決ですか?」
ヴィオが遠慮がちにそう言った。
「まぁ……解決っていうか、全部燃えてなくなっちゃった感じだけどな」
「あ……そ、そうですね……」
「……まぁ、いいや。とにかく、さっさと帰るぞ」
俺はそういってアニマを背負ったままで、燃え盛る屋敷を背にして歩き出した。
後の3人も同様に俺に付いてくる。
最後はこんな感じになってしまったが……とにかく、俺を縛っていた過去の記憶は、昔暮らした屋敷と共に消滅したようだった。




