別れの言葉 2
「おや? 君たちは……」
「あー……えっと、我等は、その……客じゃ」
屋敷の扉をあけ、出迎えたのは、俺の親父だった。その親父に向かってセピア、フォルリ、ヴィオが対応する。
「道に迷った。家にあげてほしい」
フォルリが片言にそう言う。
「え、えっと……お願いします……」
ヴィオも深く頭を下げた。
すると、親父は嬉しそうに笑顔で3人のことを見た。
「もちろんだ。今日は私の息子の誕生日なんだ。さぁ、君たちも一緒に祝ってくれ」
この前と同じようなセリフ……それを聞いて3人はホッとしたようだった。
そして、そのまま3人は家の中に招き入れられた。
「さぁ、行くわよ」
アニマの合図で俺は2人して行動を開始した。
先に3人が屋敷に入った後で、俺とアニマが別に屋敷に突入する。
親父に見つからないようにする必要があったからである。
そして、扉を開け、屋敷の中に入る。
「……やはりね。ループは続いているみたいね」
アニマが呟いたとおり、屋敷の中は綺麗な状態だった。つまり、今俺達は過去の中にいるというわけである。
「親父に出迎えられなくても過去の中に入れるんだな」
「ええ。おそらく、屋敷全体に魔宝具の効果が及んでいるのね。それが夜までしか続かない、っていうだけ。お父様に出迎えられなくても過去の中に入れることはできるわ。とにかく、お母様の部屋に行くわよ」
そういって俺とアニマはそのまま母さんの部屋へと進む。
長い廊下を歩き、母さんの部屋の前で足を止める。
「……タイラー。悪いのだけれど、お母様と交渉は私にさせて」
「え……あ、ああ。別にいいけど……なんでだ?」
「簡単よ。過去との会話は危険なの。特に、その過去と関係が深ければ深いほど。過去への憧憬にとらわれて帰って来られなくなる場合があるから」
「え? そ、そうなのか……でも、アニマの日記ではいつも普通に会話しているじゃないか」
「それは、あの過去が私を拒絶しているから大丈夫なのよ。でも、この過去は……タイラー、アナタを求めているわ」
アニマは真剣な顔で俺にそう言った。
そう言われて俺は少し背中に冷たいものを感じてしまった。
「……タイラー。大丈夫?」
「あ、ああ……大丈夫さ。お前がなんとかしてくれるんだろう?」
「ええ。十中八九、大丈夫よ」
アニマの言葉を信じて、俺とアニマはそのまま母さんの部屋の扉を開けたのだった。




