別れの言葉 1
「……で、どうしてこんなに人数が増えているのかしら?」
「あ、あはは……すまん、アニマ」
翌日、マジック・ジャンクに向かった俺には、フォルリ、セピアと2人分人数が増えていた。
「タイラーから話、聞いた。私も同行する」
「ふむ、我等も同感じゃ。主の過去、我等も見ておきたいからのぉ」
フォルリとセピアがそう言うと、アニマは大きくため息をついた。
「す、すまん……アニマ」
「別にいいわよ。大方、魔宝具の在処はわかっているんだから。それに、人数が多い方がたぶん便利だと思うし」
アニマはそういって地下室に降りていく。俺達もその後に続いて、地下室にある扉へと向かっていった。
そして、アニマが扉の前に来ると俺達の方に振り返った。
「……皆、いいわね。タイラーの屋敷を支配している魔宝具は微妙な魔宝具よ。処理は私がやるから……そこの3人には陽動をお願いするわ」
「陽動? どうすればいいのじゃ?」
セピア、フォルリ、そして、ヴィオは不思議そうな顔でアニマを観る。
「簡単よ。先に屋敷に入ってくれればいいわ。ほら、行くわよ」
そういってアニマは扉を開いた。その先には前と変わらず、俺の幼い頃の記憶をとどめた屋敷がそこに建っている。
「……まさか、あれが主の屋敷とは言うわけじゃなかろうな?」
セピアが信じられないという顔でそういうが、アニマは小さく頷いた。
「大きい。タイラー、お金持ち」
目を丸くしてフォルリもそう言う。
「ああ、昔はな。今は金なんて全然持ってないよ」
「そうね。お金なんて持ってない方がタイラーらしいもの。ほら、皆、行くわよ」
そういってアニマを先頭にして屋敷の方に向かっていく。
綺麗に整えられた花壇……見た目には普通の屋敷。
俺は今一度屋敷を見上げてしまう。
俺は今日こそ、過去に決別する……いや、元から決別はしていたのだ。
ただ、別れを告げる……とでも言ったほうが正しいのだろうか。
なんとなくだが、俺はそう思った。
「ほら、タイラー。行くわよ」
アニマの言葉で我に返ると、俺は屋敷の扉の方に向かって進んでいった。




