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家族の形 3

「……その子、使い魔」


「ああ、そうだ」


 リビングに戻った俺は、フォルリとセピアにヴィオのことを説明した。


 二人共なんとなくヴィオが普通の猫ではないことに気付いていたようで、あまり驚いた素振りは見せなかった。


「なんで、黙ってたの?」


「え……いや、まぁ……話せば長くなるんだが……」


 フォルリにそう言われ、俺は仕方なく事の始まりから話し始めることにした。


 ヴィオと出会ったこと、俺の屋敷のこと……総てを話すと、2人は黙ったままで俺とヴィオを交互に見ていた


「……なるほど。主にそんな過去があったとはのぉ」


 最初にしみじみとそういったのは、セピアだった。


 フォルリは困った顔で俺のことを見ている。というよりも、心配しているようにも見える。


「……タイラー。可哀想」


「え……おいおい、フォルリ。そんなこと云うなよ。もう俺はとっくにあの屋敷のことは過去のことだって割り切っているんだ。たまたま、この使い魔のせいでまた関わることになっただけで……」


 俺がそういうとフォルリはヴィオを見た。ヴィオは申し訳無さそうに頭を下げる。


「じゃが、主の話によれば、屋敷のどこかに魔宝具があるということなんじゃよな? そして、その魔宝具の検討も大体ついている、と」


「ああ、おそらくな」


「しかし……その魔宝具を破壊すると、その……主の父や母もおそらく……」


 消えてしまう。


 そう言おうとしてセピアは言葉を口にするのを躊躇った。俺は小さくため息をついた。


「……ああ。そうだろうな。だけど、親父や母さんは既に俺の過去の存在なんだ。仮に魔宝具を破壊してそれが失われても仕方ないと思っている」


 そう言うと3人は悲しそうに俺のことを見た。


 ……とは言っても、俺だって完全に割り切ることができているわけではない。


 魔宝具を破壊してみないとどうなるか……俺にだって想像できないのだ。


「……タイラー。その、1つ、私、言いたいことある」


 と、いきなりセピアがそんな重苦しい雰囲気の中で口を開いた。


「ん? なんだ、フォルリ」


「……私、タイラーと一緒にいる。困ったり、悲しいことあったら、私に頼って欲しい」


 フォルリは少し恥ずかしそうにそう言った。


 俺はその時、なぜだか頭の中に家族という言葉を思い浮かべた。


「ははっ……ありがとう。フォルリ」


 俺がそう言うとフォルリは嬉しそうに微笑んだ。


 あの屋敷が俺の過去だとすると、今俺が一緒にいる居候たちは、俺の現在なのかもしれない……


 そんな柄にも無い事を考えながら、俺は明日のことに備えようと思った。

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