家族の形 2
「い、いいんですか? お屋敷のこと、言わなくて……」
部屋に戻ると、猫の姿のままでヴィオは俺に心配そうにそう言ってきた。
「……いいんだよ。これは俺の問題だ。あまり他人を多く巻き込みたくない」
「……その……あの人達は、御主人様の……家族じゃないんですか?」
ヴィオにそう言われ、俺は思わず面食らってしまった。
家族……さすがにあまりにも突拍子のない言葉だと思った。
「家族か……ははっ。ちょっと違うなぁ。アイツ達は居候だよ。ただ成り行きでこうやってこの家に居着いているだけさ」
「そう……なんですか」
しかし、実際は家族……ヴィオが言ったその言葉は、俺の頭の中でグルグルと回っていた。
俺にはもう家族なんていない。
親父も母さんも過去の中に囚われたままだ。だから、現在にいるのは俺一人。
それが当然だと思っていたし、それには十分慣れていた。
その方がどうしようもない暮らしをすることにおいても便利だった。
だから、俺は一人でいい。そう思っていた……はずだった。
なのに、現実はどうだろう。アニマ、セピア、フォルリ……そして、目の前の黒猫。
俺は、面倒事を面倒だと言いながら、結局それを抱え込んで、結果として、居候を増やしている気がする。
だとすれば、それは俺にとって本当にただの居候なんだろうか。
そう考えた時、セピアの顔、そして、心配そうに俺のことを見る、フォルリの顔が頭に浮かんできた。
「……確かにな」
俺はそのままヴィオを両手で抱える。
「え……御主人様?」
「確かに、アイツラは居候だよ。俺にとって成り行き上の同棲人でしかない。でも、なんというか……だからといって、それだけの存在、ってわけでもなさそうだ」
俺がそういうとヴィオは少し嬉しそうにニャアと鳴き声をあげた。
「ほら、さっさと人間の姿になれ。行くぞ」
「はい! 御主人様」
俺はすぐに人間の姿に戻ったヴィオをつれてもう一度、リビングに戻ったのだった。




