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君がいた思い出 7

 結局、その日は既に屋敷に行くことはせず、俺は一度家に帰ることにした。


「お屋敷には、もう行かないんですか?」


 不思議そうにヴィオは俺にそう訪ねてきた。


「……まぁ、行っても仕方ないからな。あの屋敷の過去が繰り返されるのは、夜になるまでなんだ。夜になったらもうあの寂れた屋敷のまま……朝になるまで戻らない」


「そうなんですか……御主人様、大丈夫ですか?」


「あ? 何だがだよ」


 ヴィオはなぜか心配そうに俺にそう聞く。


「だって……もう何年もあの状態が続いてるんですよね」


「ああ、そうだ。5、6年前、なんとか解決策を見つけたくて、キンケイドの元を飛び出した……でも、結局、何もわからなくて、すぐに酒と博打だけの日々になったよ……」


「そこで、魔女様に会ったんですね……」


 ヴィオにそう言われ、俺は何も言わなかった。


 アニマとの出会いは、偶然だった。


 別に俺の屋敷をどうにかしてほしいとか、そういう思いはとっくにどうでもよくなっていた。


 だから、この時期になるまで、アニマにそのことを言わなかったのだ。


「それなのに……お前のせいだぞ。このマヌケ猫め」


 そういって俺は先程からずっと腕に抱えていた黒猫にそう言った。


 黄色い左の瞳と緑色の右の瞳……左右で色の違う瞳をした黒猫は困ったような目で俺のことを観る。


 ヴィオは先程言ったように、確かに黒猫の姿になることができた。


 その黒猫になったヴィオを、俺は先程からずっと腕に抱えていた。


「だ、だって……仕方ないじゃないですか……アタシにはどうすることもできなかったんですよ……」


「……まぁ、いい機会だよ。これもなんかの縁だと思うし……とにかく、家に帰ったら大人しくしてろよ」


 そういって俺はヴィオを抱えたまま、家に戻ったのだった。

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