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君がいた思い出 3

 親父にばれないように、俺達は勝手に二階へと上がり、母さんの部屋へと向かった。


 長い廊下を歩きながら、俺は少し戸惑っていた。


 母さんの所に行っていいのだろうか……


 これが「過去」だと分かっていても、俺は戸惑っていたのだ。


 そして、しばらく歩くと、母さんの部屋の前にたどり着いた。


「ここが、母さんの部屋だ」


 俺はそういって立ち止まった。


 1つ、間を置いてから、扉のノブに手をかける。


 そして、そのまま扉を開けた。


「あら……あなた? どうしたの?」


 母さんの声……何度聞いても懐かしい、優しい声だった。


 部屋にあるのは、大きなベッドだけ……


 そう。かつて俺が幻影水晶で眠っていたあの部屋そっくりな部屋がそこにはあった。


「あら……あの人じゃないのね。アナタ達は……」


 黒い長い髪に、右目の下には黒い泣き黒子がある美女。


 しかし、痛々しいほどにやせ細り不健康そうな顔色で、彼女の体調が良くないことはすぐにわかった。


「俺達は客です。先ほどご主人に挨拶したので、奥様にも挨拶しようと」


 俺がそう言うと母さんは、優しげに微笑んだ。


「そう……お客様。よろしく。私はこの家の主人の妻です……ごめんなさいね。私、あまり動けなくて……」


「いえ。お気になさらず」


「今日は私の息子の誕生日なの……あの人、張り切っていたでしょう? だから……」


 そこまで言って母さんは大きく咳き込んだ。苦しそうにする母さんを見ていると、胸が締め付けられるような気分になる。


「大丈夫ですか?」


「ええ……ごめんなさいね。ちゃんとお相手できなくて」


「いえ……では、これで」


 俺は背を向け部屋を出る。アニマとヴィオも俺達につづいて部屋を出たのだった。

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