君がいた思い出 1
「……で、ここがタイラーの住んでいた家の近くなの?」
アニマが開いた扉の先。そこはなんだか寂しい場所だった。
「ああ。ここらへんだったな……」
周りを見ると、何もない荒野が当り一面に広がっている……ここが、俺が住んでいた家の周辺だということは俺が一番理解している。
「で、ここから近いのよね?」
「ああ、こっちだ」
俺を先頭にしてアニマ、ヴィオは歩き出した。
しばらく歩いていると、遠くの方に家の影らしきものが見えてきた。
「あれ……もしかして……」
「ああ。そうだな」
俺は何も言わずにそのまま家の方に向かっていく。
近づくに連れて、それがそれ相応に大きい屋敷だということは理解できてきた。
そして、その外観が俺にとっては酷く懐かしいものだということも。
「これが……タイラーの家」
「ああ。俺の記憶通りだ」
見た目には、幻影水晶で見たあの屋敷とほとんど変わらなかった。
屋敷の門に近づいていき、そのまま門を押す。すると簡単に門は開いた。
「入っちゃっていいの?」
「ああ。どうせ誰も住んでいないからな」
そして、そのまま俺とアニマ、ヴィオは中に入った。屋敷の庭は綺麗に整備されていた。「ここ……誰も住んでいないんですよね?」
庭の様子を見て、ヴィオが俺に訊ねて来た。
「ああ。キンケイドがたまに庭を整備するそうだ。ほら、玄関だ」
そして、すぐに屋敷の玄関が見えてきた。俺は迷わず扉のノブに手をかける。
「さて……さきに言っておくが、この家には誰も住んでいないんだ。それだけ理解してくれ」
「え……ええ。わかったわ」
アニマとともにヴィオも頷いた。俺はそれを確認してからゆっくりと扉を開いた。
「ん? おや、お客様かな?」
扉を開いた先は、大きな玄関ホールだった。
その中央にいたのは、貴族が着るような整った服を着た、あごひげを生やした男。
ソイツがいきなり屋敷に入ってきた俺達似対し、不思議そうな視線を向けていた。
「……え? タイラー、あの人……」
「ああ……あれが、俺の親父だよ」
俺はゆっくりと自分の言葉を確かめるようにそう言ったのだった。




