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封じられた過去 1

「どうぞ」


「ありがとう。ふぅん……いいお店じゃない」


 アニマは店の中を見渡しながら、感心した様子でそう言った。


 目の前に出されたお茶を見つめながら、アニマはジッと俺のことを見てくる。


「……で、この紳士は、タイラーとどういう関係なのかしら?」


 予想通り、アニマはそのことを訊いてきた。俺は大きくため息をついて、老人、そして、ヴィオを見た。


「……ったく。やっぱり捨て猫は自分で面倒を見るべきだったな」


「タイラー。質問に答えて」


「……はぁ。わかったよ。執事だよ。執事。キンケイドは俺の家の執事だった」


 俺が投げやりにそう答えると、アニマは俺、そして、キンケイドを観る。


「執事……本当なの?」


「はい。私は……タイラー家の執事でございました」


 辛辣な声で、キンケイドはそう言った。


「執事……へぇ。いつも博打と怠惰な生活しかしていないタイラーに、執事がいるとは思えないのだけれど……」


「昔の話だ。それに、キンケイドは随分昔に執事をクビになっている。ソイツが勝手に今も執事を名乗っているだけだ」


 俺は強い調子で否定しても、アニマは納得していないようだった。


 どうやら、事の真相をアニマは見透かしているようである。


「あ、あの……」


 と、そこへ今まで黙ったまま立ちっぱなしであったヴィオが口を開いた。


「どうしたの、子猫ちゃん」


「え、えっと……なんというか……別にいいです。その……なんか私のせいで、面倒なことになっちゃってみたいで……」


「あら。子猫ちゃんのせいじゃないわ。前からタイラーにとっては面倒なことになっていたのよ。タイラーがそれを放置していただけで」


 アニマにそう図星をつかれ、俺は何も言えなかった。


 キンケイドは難しい顔で俺を見ている。


「タイラー。いい機会だわ。子猫ちゃんが作ってくれた機会なのよ。この際、私にアナタの過去、教えてくれないかしら?」


 アニマは俺を見ている。その瞳は、ただ単に興味があるからではなく、俺のことを心配しているようにみえる。


 もっとも、俺の勘違いかもしれないが。


「……はぁ。キンケイド、俺にもお茶をくれ」


「若様……」


「長くて下らない話なんだ。お茶でもなければ続けられない」


 俺はそういって、アニマの正面の椅子に腰をおろしたのだった。

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