間抜けな黒猫 2
「さぁ! 皆さん! 見ていくだけでもいいから! 沢山あるよ! それに安くしておくよ!」
声のする方に、俺とアニマは歩いて行った。すると、布の上に大量の魔宝具……もとい、ガラクタを並べ、元気よく声を出す少女がそこには立っていた。
一見すると……普通の町娘のように見える。ただ、黒いフードを被っている所を見ると、魔女……なのかもしれないが、それにしてはアニマのような胡散臭さがどうにも足りない感じだった。
「ちょっと、アナタ」
と、アニマは間髪入れず、その少女に声をかけた。
「あ! お姉さん! どうです? これ、魔宝具って言うんですよ? 魔法、使ってみたいでしょ? ほら、この宝石! ただの宝石に見えるでしょ? でも、これ、魔宝具なんです! 手で握って念じると、魔法が出るんですよ?」
歯を剥きだして快活そうに笑う少女。尖った犬歯がなぜか人懐っこさを感じさせる。
「へぇ。そうなの」
そういってアニマは石を手にとった。そして、ギュッと強く握る。
すると、先ほどと同じように一瞬光ったかと思うと、瞬時に宝石は粉々になった。
それを見て、少女は唖然としている。
「あら。ごめんなさい。これ、まがい物みたいね」
アニマの言葉で我に帰ったのか、少女は気まずそうな顔で俺とアニマを観る。
「え、えっと……お姉さん、もしかして……」
「ええ。魔女よ」
すると、少女は苦笑いした後で、チラリと俺の方に顔を向けた。
「え、えっと……お、お兄さん! そ、その……話、訊いてくれませんか!?」
「え? お、俺?」
俺が反応すると、少女は必死に首を縦に振った。
どうやら、俺に助けを求めているらしい。
「アニマ……えっと……」
「……ええ。わかっているわよ。アナタ、別にアナタをどうにかしようって思っているわけじゃないのよ」
「そ、そうなんですか……」
すると、女の子は申し訳無さそうに俺とアニマを交互に見た。
「その……ここじゃ話もなんなんで……そこの路地裏で話をしませんか?」
俺達は顔を見合わせてから、女の子の提案に乗ることにしたのだった。




