間抜けな黒猫 1
「……で、そのインチキ魔宝具売りもやっぱり魔女なのか?」
街への道中、俺が訊ねるとアニマは首を横に振った。
「魔宝具を売るのは、別に魔女だけに許されたことではないわ。多少魔宝の知識があれば、魔宝具を売ることはできるわ。ただ……このレベルのまがい物を売っているのは、魔女どころか、魔宝具の知識もないヤツでしょうね」
「へぇ……しかし、どうしてそんなすぐバレるようなことをするのかね……魔宝具なんて使えなかったらただのガラクタじゃねーか」
「そうよ。ガラクタと魔宝具の区別はつきにくい……だからこそ、まがい物の魔宝具を売りつけるのよ」
そう言われて俺は納得できた。
ということは、俺も少し工夫すれば適当なガラクタを魔宝具として売りさばくことが出来るんじゃないだろうか。
「……もちろん、そんなまがい物を、私の目の届く範囲で人様に売りつけるってことがどういうことかは、タイラーはわかっているわよね?」
アニマが笑顔でそう言ったのを聞いて、俺はそんな考えはあまりにもリスキーすぎることを瞬時に理解した。
「でもよぉ、そんなヤツ、どうやって探すんだ?」
「そうね……あのお客に訊いた所によると、街に行けばすぐわかるって……」
そういって俺とアニマは街にたどり着いた。とりあえず、街で一番人が集まりそうな場所である広場に向かう。
「さぁ! 皆さん、見ていってよ! ここでしか買えない魔宝具ばかりだよ!」
と、広場からは声が聞こえて来た。
「あ……今のって……」
見ると、アニマは大きくため息をついていた。
「どうやら、件の魔宝具売りはあんまり頭の良いタイプではないみたいね」
呆れた様子で、アニマと俺は声のする方へ向かったのだった。




