偽物の魔宝具
アニマが客の対応をしている間、俺は仕方なく店の奥で待っていた。
そして、しばらくすると、アニマはなぜかうんざりとした顔で店の奥に戻ってきた。
「よぉ。どうしたんだ。そんな顔で」
「……まったく、面倒なことになったわ」
アニマの其の言葉を聞いて、さっきの客がどうやら面倒を運んできたことを俺は理解した。
「へぇ。で、どんな面倒だ?」
「……これ、見て」
そういってアニマは俺の前に何かを置いた。
それは綺麗な色の宝石だった。
「……なんだこれ? 宝石だな」
「ええ。宝石……魔宝石……だ、そうよ」
「魔宝石? じゃあ、魔法が出るのか?」
俺が訊ねると、アニマは宝石を握った。
すると、一瞬アニマの手が光ったかと思うと、宝石はそのまま砕け散ってしまった。
「え……魔法は?」
「出ないわ。これ……模造品よ」
「模造品?」
「ええ。これは魔宝石を騙った偽物ってこと。魔法を使用することはできないわ。使用するとこんな感じで砕けてしまう……さっきのお客はこれを十個ほど買わされて魔法が使えないから、私に売りに来たらしいわ」
「へぇ……え? ちょっと待てよ。それって……」
「ええ。つまり、ここらへんで悪徳商売をしている魔宝具売りがいるってことね」
アニマは大きくため息を付いた。
「ソイツ……ここらへんにいるのか?」
「ええ。歩いていける程度の近くの街よ。タイラー、もちろん、行くわよね?」
アニマがニッコリと微笑んだので、俺は大きく首を縦に振ったのだった。




