心配事
「……で、あの日はどうだったのじゃ?」
アニマの家に泊まった日から少し経ったある日、セピアが朝食時に俺に訊ねて来た。
「どうだったって……何が?」
俺が不思議そうに訊ねると、セピアは不満そうに俺を見る。
「決まっておるじゃろう。店主とはどうだったのじゃ、と聞いているのじゃ」
俺は今ひとつセピアの質問の意味がわからなかったので、思わず眉間に皺を寄せてしまう。
「だから……どうだった、ってどういう意味だよ?」
俺がそう言うとセピアはキョトンとした顔で俺を観る。それから、何かを諦めたように小さく息を吐いた。
「そうか……まぁ、そうじゃろうと思っておったけどのぉ」
「は? 何が言いたいんだよ」
「ああ、いや、主よ。別に変な意味は無いのじゃ。ただ、あまりにもフォルリが心配するものでのぉ」
セピアがニヤニヤしながらそう言うと、俺の隣で飯を喰っていたフォルリの手の動きが止まった。
「心配って……何を心配していたんだ? フォルリ」
俺が訊ねると恥ずかしそうにフォルリは俺から顔を反らす。
「……別に、心配、して、ない」
「それは嘘じゃろう。夜の12時を回ってから泣きそうな顔で我等にマジック・ジャンクに主を迎えに行こうと言い出したのは、どこの誰じゃったかのぉ……」
と、セピアがそう言うと、フォルリはいきなり立ち上がった。
「わ、私……食事、終了する」
「え? おい、フォルリ。まだ残ってるぞ?」
しかし、フォルリはそのまま振り返りもせずに、物置部屋の方に歩いて行ってしまった。
「なんだ……フォルリのヤツ、どうしたんだ?」
「ふふふ……魔女というのは、厄介な人種ということじゃよ、主よ」
セピアはなんだか意味深なことを言って、怪しく微笑んだのだった。




