第二話
14.12.02 推敲(微細)
「だめだ。K君。」
博士も慌ててロケットへ飛び込み、助手を操作パネルから引き離した。
「一先ず、落ち着いて準備してから行こうじゃないか。」ハアハアと息を切らしながら、博士は言った。
そうして、二人は準備を整え、いよいよ金の小惑星群への旅に出発した。
☆
「K君。K君。トイレかね。」
助手がロケット内のトイレに籠ったきり、もう2時間も出てこない。
「どうした……あっ、こいつ、酒を飲んどるな。」助手は、あろうことかウイスキーの瓶を片手に酔っぱらって寝てしまっていた。
「起きろっ。起きんか。このろくでなしめっ。」博士が助手の頬をひっぱたく。
「痛っ。な、なんだ。博士ぁ。」助手はようやく目を覚まして言った。
「なんだではない。ここだどこだか忘れておるのかっ。」
「トイレでしょうが。」酔っぱらって赤くなった顔で、助手。
「馬鹿者めっ。我々は宇宙にいるのだぞ。何が起こるかわからんのだぞっ。」博士は、助手をトイレから引きずり出して言った。
「しかし、なんにも起きませんね。博士。」
しばらくたって、酔いが醒めた助手が退屈そうに言う。
「ふふふ。K君。馬鹿者の君には分からんだろうがね。なんと、我々はもうすぐあの、金の小惑星群に到着するのだ。」博士は、鼻毛を抜いている助手に向かい、ふんぞり返って言った。
「えっ。そうなんですか。思ったよりもずいぶんと早かったですね。いいやぁ、大したもんですよ。このロケットは。博士が作ったとは信じられませんね。」助手がロケットだけを褒めると、
「何をっ。まあ、今は言い争いをしている場合ではないのだ。ところで、K君。あれは持っとるだろうね。」博士はそんな助手には構わず、言った。
「なんですか。あれとは。」ぽかんと口を開けて助手。
「このアホめ。この間、いつも大切に身につけておくように言った、腕時計型の装置に決まっとるだろうが。」
「ああ。あれのことですか。あれならいつもこの右腕に……あっ。ない、ありませんよ。博士っ。」
「なんだとっ。探せっ。……あれがなければ、もしも若く麗しい女性ばかりの星へ不時着した場合に、儂ばかりがモテモテになれないではないかっ。」目玉を充血させて、必死の形相で言う博士を、
「ふんっ。なんだ、そんなことのための装置ですか。無くていいですよ。そんなもん。」助手は鼻で笑って、探そうともしない。
「なんだとはなんだ。あれは、若いK君の無駄に漲るエネルギーを蓄えておいて、儂のものにするための装置なのだぞ。儂の身に付けたこの受信機でK君のエネルギーを奪い、儂だけが好きな時に好きなだけ使えるという、世界を救う為の素晴らしい……」
「何が世界を救うですか。あんなもの、単なる博士の妄想を叶えるための装置でしょうが。いりませんよ。ああ、大切にして損した……それはそうとして、そもそも、そんな星あるんですかね。」助手はあきれ返りながらも、その星を妄想し始めた――
「いいなぁ……その星は、男性の寿命が女性に比べて極端に短くて、人口に占める性別の割合は、男性一人に対して女性は千人以上で……」助手が妄想すると、
「そして、妙齢のまま女性は年を取らなくて……」博士もその妄想の中に入り込んでしまった。
「全ての女性が、様々なタイプの眉目麗しく……あるいは……」助手と博士の妄想は、際限なく膨らんでいく。
その時、二人を乗せたロケットは、まさに金の小惑星群へと近づいていた――
話は続く……




