第一話
(あとがきに転記)
「K君。地球にある金属のうちで、一番たくさんあるものをしっているかね。」
博士は助手のK君へ尋ねる。
「知ってますよ。それぐらい。Feでしょう。」
「そうだ。鉄だ。それはなぜかわかるかね。」
さらに尋ねる博士に対して、助手は言い淀む。
「いや……それは……」
「やはり、まだまだだな。君は。」
そう言って、博士は説明した。
「地球は鉄の惑星だ。太陽系に存在する惑星の中でも、際立って鉄を多く含んでいる。だから、この地球上では鉄は最もありふれた金属だと言えるのだ。」
「それがどうしたって言うんですか。」
助手のまた始まったというような顔を見ても、博士はさらに言う。
「まあ、待て、ここからだ。地球を含め、その惑星に含まれる金属の総量は、ほぼ決まっている。落ちてくる隕石に含まれるものは除くと、いう意味だ。分かるな。」
「分かりますよ。僕にだってそれぐらいは。」
助手のふくれっ面も気にせず、また博士は得意げに続ける。
「そこでだ。儂はあることを思いついた。」
「なんですか。もったいつけて。」
助手は、続きを聞きたくなってきた。
「金だ。」
「え。なんですか。」
「Auだよ。君。」
「分かってますよ。それがどうしたっていうんですか。」
博士の調子に付き合っていられないと、助手は焦れている。それを楽しむかのように博士は、
「鉄の惑星があるなら、金の惑星もあるだろうと、儂は探した。そして……」博士は、急に声をひそめた。
「盗聴などされていないだろうな……」
それを見た助手は笑って言った。
「ははは。こんなぼろ研究所に、誰がそんなもの。」
「ぼろで悪かったな。しかし、それも今までの話だ。」博士は胸を張って、
「遂に見つけたのだ。金の小惑星群を。」と、宣言するように言った。
「えっ。博士。本当ですか。」
助手は驚いて、留め金が壊れてしまって、仕方なく手に持っていた大事な腕時計を落としてしまった。自慢話に得意になっている博士はそれに気づかない。助手もそれどころではなく、話に夢中になっている。
「でも、博士。そこまでどうやって……まさか。あの開発中の……」
「ふふふ。K君。これを見たまえ。」
博士は、倉庫に通じる扉を開けた。
「博士……これは。ロケットじゃありませんか。いつの間に完成させたんですか。」
助手は、研究所に隣接しているこれまたぼろくて薄暗い倉庫の中で、ぴかぴかと銀色に輝く二、三人乗れそうなロケットを指さして言った。
「ははは。驚いたかね。K君。これが儂の開発した『Auお得ロケット』だ。」得意そうに言う博士に対して、
「なんですか。そのネーミングセンス。抜群にあたま悪いですね。」
助手は名前をけなしながらも、その顔にはある期待がみなぎっている。
「この研究所にある、金の小惑星群のデータと、このロケットで宇宙へ旅立ち、大儲けをするのだ。あははは。必ずこの研究は成功するのだ。助手君にもちょっぴりは分けてやるぞ。」
博士は、もはや札束に埋もれた自分を想像していた。
「博士。そうは行きませんよ。僕もそれ相応の分け前は貰わないと。」
「何を言っとるかね。君。まあ、そう焦るな。」
「先走ってるのは、博士も同じでしょう。」
二人はもはや金欲の権化となりつつある。
「K君。落ち着き給え。」
博士は、わざわざホワイトボードを引っ張り出してきて、説明を始めた。
「えー。それでは。わたしが書いた、この精密極まりない図で説明する。まず、これが地球だ。」
「なんですか。その落書きみたいなのは。それに、その地球。僕はマジックの染みかと思いましたよ。」
助手は、あまりの博士の画伯ぶりにも驚いた。
「ええい。折角わかりやすく説明してやろうと思ったのに。」
不愉快になった博士は、ホワイトボードを研究室の奥へ押しやり、
「つまり、ロケットで取りに行くのだ。」と、恐ろしく雑な説明をした。
「取りに行くって……また、いい加減なことを。」助手が不審顔で言う。
「何がいい加減だ。これは科学的に確かな根拠があってのことだぞ。」
博士は、むっとした顔で言う。そして、
「まず、小惑星群の一つ一つは小さい。ソフトボール位だ。しかし、儂の確かな計算によると、少なく見積もってもその小惑星の総重量のなんと50%は金が含まれておるのだ。どうだ。すごいだろう。」と、またまた自慢げに言い切った。そして続ける。
「あのロケットは、すでに発射準備が出来ておる。発射台などいらないのだ。すぐに飛べるのだ。」博士が鼻息も荒く言うと、
「すごいですね。博士。つまり、ロケットで小惑星群まで飛んで行って、その小惑星を詰めるだけロケットに積み込んで、地球へ戻ってから売りさばいて、一儲けしようって魂胆ですね。いいですよ。こうなったら、すぐに行きましょう。今から行きましょう。」助手も負けじと目を輝かせ、鼻を膨らまして興奮してきた。
「そして、なによりここがすごいのだ。あのロケットは自動操縦で……」博士は続けるが、助手はもはや聞いていなかった。ロケットに駆け寄り、なにやら触り始めた。
「えーっと、どれが入り口の開閉ボタンだろう。」
「こらっ、待てっ。勝手に触るな。」博士が止めるのも聞かずに、助手はなんとか入り口を開けて、中に入ってしまった。
「おお……。これで宇宙へ旅立つのか。どれどれ……」助手が勝手にロケットの操縦席にあるボタンをいじくりだした。
2話で完結(予定)←ウソ
次かその次で完結したらいいな。(弱気)




