マデュラ編
ここは、イシュケル魔城……。
「おや、何やら強い力の生命体が消えたようですね」
若き日のマデュラは、時を越えし者の命が途絶えたのを察知していた。
まだ、魔界も統率が取れず、全ての魔物達は、実質マデュラ支配下にあった。
とは言え、マデュラ自身に巨大な力があったわけでもなく、長になる気質を偶然備え持っていただけの話だ。
「このままにしておくのは、惜しいですね。呼び止めてみますか?」
祭壇に向け祈りを捧げ、時を越えし者の御霊を呼び寄せる。
マデュラに取ってこの程度のことは、容易いことだった。
やがて、黒く濁った御霊は、マデュラの前に鎮座した。
「ホッホッホ。これは、面白い。思ったより使えそうですね」
御霊になった時を越えし者は、そう述べるマデュラに返す。
「私は誰だ……自分が何者なのかもわからぬ……」
「貴方は、憎き勇者どもに滅ぼされたのですよ。どうでしょう? 私と手を組み魔界を盛り上げてはみませんか?」
マデュラはぼんやりと浮かぶ、その御霊に囁いた。
「我は誰にも従わぬ……。だが、自分が何者なのか確かめたい。いいだろう……お前と手を組もう」
「ホッホッホ。力強いお言葉ですね。では、儀式を始めますね」
マデュラは時を越えし者の御霊に、三日三晩寝ずに祈りを捧げた。
「さぁ、どうでしょうか?」
そこには、以前にも増して巨大で強靭な肉体を持った魔物の姿があった。
「素晴らしい……気に入った」
「名前はそうですね……ジュラリスというのは、どうでしょうか? 魔族語で『破壊の王』という意味です」
「破壊の王か……悪くないな……」
こうして、ここ魔界にジュラリスが誕生したのである。
「気に入ってもらえて良かったです。しかし、まだまだ未知なる力を秘めているようですね。その為には、イシュケル(影武者)の生け贄が必要です。どうです? その役目、私に任せてもらえないですか?」
「よかろう……我は、元いた場所に戻ろう……楽しみに待っているぞ」
ジュラリスは、咆哮を上げながら、ガルラ牢獄へと帰って行った。
「さて、忙しくなってきましたね」
こうして、歴史は繰り返されるのであった。
この頃、勇者ラックが立ち上がり、魔界に向かっていたのは言うまでもない。
そして、その後現実の世界から佐久間実太は、マデュラに導かれ魔王イシュケル……すなわち、影武者としてこの地にやって来るのであった。
だが、それは後の世の話である。
ひっそりと偽りの平和を見せる世界に、歴史は再び動き始めた。
NEXT『自ら育てた勇者を倒すために、魔王になった男(仮)
次のアレイス編で、この物語は本当に終わりです。
不定期なので、気長にお待ち下さい。




