表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/50

それぞれの辿るべき道

「気が付いたようだな……」


「すみません……」


 抱き抱えるイシュケルから、恥ずかしそうに睦月は離れた。

「皆、心配したんですよ」


 ミネルヴァも心配そうに、睦月の顔を覗きこむ。

睦月は、自分の意思で立ち上がり話し始めた。


「私は何をしていたのでしょう……それより、パパとアレイスは?」


「覚えていないのか?」


 イシュケルとミネルヴァは、睦月が玄武に操られていたことに気付いた。


「拐われたとこまでは、覚えているのですが……」


「そうか……幾つか伝えておくべき事実があるが、心の準備はいいか?」


 イシュケルは、あるがままの真実を睦月に伝えるのが、役目だと思っていた。


「はい、覚悟は出来ています……」


 睦月は全てを受け入れる為、瞳を静かに閉じた。


「うむ……まず、睦月よ。お前は騎馬四天王『玄武』に拐われた。そして、玄武に操られ花嫁にされそうになった……。そこに我々が駆け付けた。アレイスが戦いを挑み、最終的に玄武は自爆した……」


 そこで、イシュケルは言葉を詰まらせ、一旦天を仰いだ。


「問題はその後だ……。玄武はアレイスを巻き込み自爆したのだ……そう、アレイスも死んだ……」


「そ、そんな……」


 睦月は泣き崩れ、しゃがみこむ。

ミネルヴァは、そっと寄り添う。


「しかしだ。ウッディがアレイスを連れ、元の世界に戻りサハンの力を借り生き返らせようとしている……僅かな望みだが、我々はそれに賭けるしか術はない」


「では……私達は」


 大粒の涙を拭い、睦月は目を見開いた。

そこに、『希望』を感じたかのように。


「心配するな……アレイスは必ず、生き返る……少なくても私はそう信じている。それまで、我々は残りの騎馬四天王を討とうと思う……着いてきてくれるな?」


「はい」


 睦月とミネルヴァは、イシュケルの意見に賛同した。

そして、一行はシルキーベールに散らばる魔物達の亡骸を片付け、人々が戻って来れるようにした。


 数日後。


「よし、では旅立つとしよう。まずは、港街を目指すぞ」


 睦月は僅かだが、希望を取り戻しつつあった。

装備も、街で見付けたプラチナの装備に替えやる気は十分だ。

 こうして、イシュケル、睦月、ミネルヴァの旅は始まった。

 一方、先の戦闘で撤退したデスナイトは、山奥に静かに身を潜め魔シン族の残党と徒党を組んでいた。

デスナイトが魔シン族の長になり、後に呪いの館で、イシュケルとイセリナに倒されるのは、まだまだ先のこと。




◇◇◇◇◇◇


 一方、アレイスサイド。


 ここは、異界。

死んだ者がさまよう場所。

死んだアレイスは、そこに来ていた。


「ここは、何処だ? 僕は死んだのか?」


 モノクロの世界にひっそりと佇む、宮殿がアレイスの前に姿を現す。

アレイスは、導かれるように、白を基調とした石造りの宮殿に足を踏み入れた。


「誰か、居ませんか?」


 耳鳴りがするほど無の世界。

自分の声に驚くほどの無。


「誰ですか? 騒々しい……」


 そこには、白い布一枚だけを羽織り、透き通るような肌の美しい女性がいた。

床まである赤い長い髪が印象的で、瞳は空のように青い。

あまりの露出度の高さに、アレイスは目を背けた。


「ア、アレイスと申します。どうやら、死んでしまったらしいのですが、道に迷ってしまって……」


 その女性はまじまじと、アレイスを見つめる。


「貴方は人間ではありませんね? ここは、人間の来れる場所ではありません」


「確かに……ハーフと言うか……魔王と勇者の子です」


「そうですか……」


 その女性は、上品な笑みを浮かべると続けて、


「ここは、運命を背負いし強き者が集まる神殿、レチュール宮殿です。そして、私はその導かれし者を案内する『マナ』という者です。ここにいると言うことは、貴方も運命を背負いし者なのでしょう。何より、肉体が実体化しているのがその証拠です」


「でも、マナ様……」


「マナでいいです」


「マナ、僕は死んでしまったんです……」


 マナはクスクスと笑った。


「何が可笑しいのですか?」


「さっきも言いましたが、貴方の肉体は滅んでいません。運命ならば、誰かが魂を呼び起こすはずです。その時こそが、貴方の成すべき道が開けた時……」


 マナはそう言うと、アレイスに背を向けた。


「魂が戻るその時まで、私が貴方の手解きを致します。イヤとは言わせませんよ」


 アレイスは、希望に満ち溢れ、力強く頷いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ