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譲れぬ思い

 剣を構えたまま、視線を反らすことのない二人。

高鳴る胸を抑える為に、呼吸を整える。


「ウッディよ、この勝負手出しは無用だ。もし、どちらかが、命を落とせば、それはそれだけの器だったと言うことだ……」


「わ、わかった」


 ウッディは、イシュケルの気迫に負け、何も言い返せなかった。

近くことさえままならぬほどの、気迫である。


「アレイスよ、覚悟はいいな?」


「はい、父上」


 アレイスは、こんな状況下でもワクワクしていた。

話には聞いたことがあるが、父の本気の剣術を見たことがなかったからだ。

 イシュケルは、剣を構えたまま、迎撃体制を取る。

それは、息子にかかってこいと言っているかのようだった。

 アレイスは、それに答えるように、イシュケルに向け駆け出す。

可憐で芸術的な剣捌きで、胸元を斬り付ける。

痛手を負いながらも、イシュケルはそれを押し返す。

 アレイスは、一旦間合いを取り、体勢を整える。

目にも止まらぬ速さで、ウッディには何が起きているのかさえ、わからなかった。

 まさに、段違いの攻防である。


「思っていたより、出来るようだな。私の言い付け通り、剣術の訓練は怠っていなかったのだな」


 一瞬空いた間に、笑みを浮かべながら、イシュケルは言う。

まるで、息子の成長を喜ぶかのように。


「私はお前を見くびっていたようだ。ならば、これならどうだ?」


 イシュケルは、パワータイプにチェンジし、今度は自分からアレイスに駆け出した。

アレイスもまた、未完成ながら、パワータイプにチェンジする。

その途端、イシュケルの表情は、凍った。


「アレイス、お前いつの間に……」


 剣術は教えていたものの、教えていないタイプチェンジを、意図も簡単に成せたアレイスに驚いていた。


「父上、覚悟!」


 イシュケルのロングソードと、アレイスの嘆きの剣が、火花を散らし金属音を響かせる。


――キィィィン――


 二つの剣は重なり合い、鍔迫り合いが始まる。

軽い金属音がやがて、鈍い音に変わり、その接点が熱を帯び始めた。


「くっ……ここまで、やるとは……」


「父上こそ……」


 イシュケルは、歯を食い縛り、我が子に押されようとしている自分に気が付いた。


――くっ、この私が押されている? そんなことは魔王として、父親として絶対に許されぬこと――


 イシュケルは次第に、焦りを感じ始めていた。

一方、アレイスは、


――父上……何故、本気を出してこないのだろう……まさか、僕に遠慮して――


 アレイスは、父親を越えていることに気付かず、イシュケルの罠か何かと思い込み、様子を伺っていた。



 長い鍔迫り合いで、負荷が掛かったイシュケルのロングソードが根元から、折れた。


「し、しまった!」


 すかさずイシュケルは、折れたロングソードを投げ捨て、左手の爪を尖らせ応戦する。

 しかし、それを見過ごすアレイスではなく、魔王イシュケルの象徴とも言うべき、その左手に鋭く生える爪を根こそぎ刈り取った。


「父上、覚悟!」


 その次の瞬間には、イシュケルの喉元に剣先が向けられていた。


「み、見事だ……」


「父上、では? 認めて下さるのですね?」


 アレイスは目を輝かせて言った。

それは、父イシュケルに勝ったことよりも、シルキーベールを、この世界を救いたい、そんな気持ちから来るものだった。


 身体に付いた埃を払うイシュケル。

アレイスは、イシュケルの答えをじっと待った。



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