1-(1) お兄ちゃん
俺が8歳だったころ俺はいつも家の近くで一人で壁当てをしに行っていた。
しゅっっ、しゅぱっっ
「ふぅ…」
8歳だった俺は40球でヘトヘトになっていて投げたボールをキャッチできずに
ポロッとこぼしてしまった。
「あぁ、きついなぁ。もう」
俺がそういいながらボールを追いかけているとボールが転がっていっている
方の道からヒョコッと出てきたお兄ちゃんがそのボールを拾ってくれた。
「ぁっ、おーいそこのお兄ちゃん!!」
手を大きく振り上げると兄ちゃんは金髪にツンツンたった髪をこっちに
向けた。
「コレ…お前の?!」
その兄ちゃんはボールを握りながら俺に向かって手を振る。
「そうだよぉ!!拾ってくれてありがとう。
すいませんが投げてこっちに投げてくれませんかぁ~??」
お兄ちゃんは少し困った表情をして手に握ってあるボールをじっと
見つめた。ボールから視線を外すとボールをこっちに向けてなげてきたっ。
「うわっっ!!!」
しゅぱっっどしんっ
俺は情けない事にしりもちをついてしまった。
「ごめんッ!!立てるか?」
お兄ちゃんはいつのまにか俺の前に立っていて手を差し伸べている。
「ぅ…うん!てかお兄ちゃんの球ものすごく速いね!!
俺のお父さんよりもっともっと速いよ!!今までこんな人見たことない!
お兄ちゃん野球やってるの??」
俺が目を輝かせながらそう問うとお兄ちゃんはそれとは全く正反対の顔で
「あぁ…やって、たよ?今はやってねぇーんだ。」
と言った。俺はそれ以上何も聞けなかった。
「お前こそ野球やってんのか?つぅか何歳なんだよ一体。」
お兄ちゃんが一人でぶつぶつ言ってるから可笑しくて笑ってしまった。
「はは、野球は一人野球なんだ!この辺の子野球できる子いないから。
野球チームには8歳になってからってお母さんに言われているんだけど
もう8歳なんだ。でも野球チーム何処に行けばいいのか分かんなくて。」