3-(3)
ピーーーーー!!!
カーンッッ!パシュッッ
どうやらノックをしているようだった。
「何だ?あのボール打ってる奴…下手くそじゃね?あんなん取れるに
決まってんじゃねーか。何の練習になんだよ。」
彼方がブツブツそういっていると一人の男が俺たち4人の方へ歩いてきた。
「何だ?お前たち野球やりたいのか?」
その男のその声で全員が俺たちの方を見た。
「やりたいっつーか…まぁ今ん所見学だけです。」
陽輔が冷静にその男にそ言った。
「そうか。俺はココの監督をしている宮内弘樹だ。
お前等経験者だろ?」
「え?監督…?ぁ、経験者っす。」
彼方が少し満足そうな笑みをみせて監督にそう言った。
すると監督はふっと鼻を鳴らした。
「経験者が増えたところでチームが強くなるとは限らん。」
そう言ってベンチの方へ歩いていった。
守備をしている一人が俺等の事をすまなそうに見て頭を下げた。
「なんだよ。意味わかんねー。」
彼方はグランドの土を蹴り飛ばした。
「あぁ・・監督の狙いが全くわからん。ただ経験者だけじゃチーム力は
たかまらないって言いたいんだろ。」
「だからってあんな経験者を追い出すような事言わなくていいのに…。」
俺はうつむきながらそういった。
「おーい!!!初心者と経験者ペアになってボールランだ。」
その監督の声で全員が動きだしペアになってキャッチボールをしながら前へと
走り出した。初心者はボールをこぼしたりして後ろがつまったりと
いろいろ事故がおきていた。
「あんなんじゃ経験者にストレスが溜まるだけじゃねーか。」
彼方はそう言ってグランドの中央へと走り出した。
「おいお前キャプテンだろ!!このやり方でいいと思ってんのか?初心者は上達するかも
しんねーけどお前等のような経験者がちっとも上達しねーだろ!
いいのかよこれで!!!」
彼方はキャプテンに向かって大声を上げた。
キャプテンは下を向いて黙ったまま。
「おい…!!」
彼方のその声とともに彼方の服を誰かがつまみあげた。
「何すん…!!」
そう言いながら後ろを振り返るとそこにいるのは監督だった。
「俺のやり方が気に入らねーんだったら他をあたれ。」
彼方はそう言われ俺たちの元へと歩いてきた。
グランドを抜け駐車場へと向かう時俺は彼方の名前を呼んだ。
「ねぇ…彼方?」
「おい?」俺と陽輔が問いかけると彼方は小さな声で
「あんなやり方ぜってー俺が代えてやる。」
「え?じゃぁ…」
俺が言う終わる前に彼方が口を挟んだ。
「あぁあのチームで野球をしてやる。」
「「うん!!!」」
俺と陽輔が元気よくうなずいた。