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変わり果てた王宮5

サテアン王子が真剣に国を立て直そうとしているとしても私との結婚だけが道じゃない。なんとか、説得しなくっちゃ。


「はあ。」


だいたい皆して説明不足なんだと思う。……て、いうか。今まで巫女仲間からかなり邪険に扱われ過ぎて私ってば何にも知らなかったんだよね。巫女の裏事情や王宮の話なんかとんと縁がなかったんだもの。学院で仲良かったのって学食のおばさんと掃除のおじさんだけだったし。


「はああ。」


なんとか今日=結婚みたいなのは避けれたと思う。うん。混乱してるので時間が欲しいと言ったらサテアン王子は「分かった。」と言っていたもの。


フォンに人払いしてもらってベットに転がりながら天井を見た。よく観察するとこの部屋は私の居心地の良いように用意されている。決して華美では無いけれど必要なものはちゃんと揃えられて居てそつがない。ひとつひとつは丁寧に作られているもので一級品で有ることが伺えれる。きっとサテアン王子なりに私の事を大事にしてくれているのだろう。……水の巫女として、全ては国の為に。



私はどうしたらいいのだろう。


とにかく今すぐにでもルーンの無事を確認したい。


ルーンは私の大切な一部。私の命。


私の娘だとわかったらサテアン王子はきっとルーンを利用するに違いない。リアン親子みたいに王宮に飼い殺されるのは嫌だ。ルーンに何かあったら許さない。



でも……これは私個人の事情。



そもそも私は多くの人を助けるために働いていたんじゃないだろうか。


この国を救うことはそれに繋がる……。


サテアン王子に手を貸して国を立て直す事も大切なのではないかとも思える。



ああ。もう。


大切な者が出来るってことはこんなにも心を左右されることなんだろうか。純粋に巫女だけをしていた時だったら、サテアン王子に応じていたに違いない。


でも。今は違う。


私はリアン以外を愛することはないし、ルーンを守らなければならない。


ルーンの身の安全を確保して国の水源も守って……

上手く行く方法を考えなくちゃ。……もちろん、リアンの事も……。


リアンのことはサテアン王子には聞けそうもないし……もっと王宮内のことも詳しく知りたい。


あの人と……



まともに話ができるのだろうか……。




*****



「私と話がしたいだなんてよくも言えたわね。まだわからないのかしら。私が貴方のこと何とも思っていなかったって。」



「……フォンティーナお姉ちゃんがどう思って私に接していようとも、それが私を利用しようとしたとしても私にとっては親切だって思ってるの。」



「!!……はっ。相変わらずのおめでたい人ね。」



フォンに言えば絶対に逢えないと思って私は東屋で休むお姉ちゃんを宮殿裏に連れ出した。少しやつれていてもその美しさは少しも変わらない。レメ神を模したとされる像の後ろで握っていた手を離すと同時にフォンティーナお姉ちゃんは私の手を払った。お姉ちゃんの侍女に気づかれるまで時間もないので私は早く本題を切り出す。


「お姉ちゃん。私が何もできないだなんて思って付いてきたの?そういうお姉ちゃんもおめでたい人だよね。」


言って胸に隠した短剣をお姉ちゃんにちらつかせて見せた。


「……シリル……あなた……。」


「私は王妃の座なんていらない。私が欲しいのはリアン。利害は一致していたから結婚式も逃してくれたのでしょう?」


私の真剣さを感じたのかフォンティーナお姉ちゃんは私をまっすぐに見た。


「もう。無理だわ。私はサテアン様に厳しく監視されている。貴方の手引きはもうできない。」


「リアンのことは知ってるの?」


「……ほんとにリアンが好きなのね。お気の毒様。彼は今や革命軍のリーダーよ。この国の敵ね。」


「え……。」


「当然と言えば当然かもね。彼が王宮を恨んでも不思議じゃないわ。初めて噂に聞いていたときは頭の軽い綺麗な奴隷だと思っていたけれどリアンはそうじゃなかった。……それが彼の最大の不幸だわ。」


「……どこにいるの?」


「はっ。行ってどうするつもり?リアンは誰も愛さないわ。これまでにも狂ったようにリアンに貢いだ巫女は何人もいるのよ?リアンは麻薬のように人を魅了して利用した挙句に捨てるのよ。貴方を抱いたのもサテアン様の命令でしかないわ。」




「……お姉ちゃんはもしかして……。」



「いい加減、その「お姉ちゃん」って呼び方やめてくれないかしら。……勘違いしないで。私はリアンと寝たりしていないわ。私の純潔はサテアン様に捧げたのだから。でも、当然リアンは私を誘ったわ。エレニーたちは同床を許してるけれど。つまり、そう言うことなの。そう言う男なのよ。リアンは。まあ、愚かにもあなたがリアンを追ったって私には関係ない。貴方がここからいなくなれば私はそれでいいのだから。」


「……。」


「……と、言いたいところながら、困るのよ。黙っていなくなったりしたら私は確実に首を撥ねられるわ。」


「えっ……。」


「私はね、シリル。サテアン様を愛しているの。ずっと……幼いころからよ。彼の妻になることだけを考えて生きてきたのよ。その為ならなんでもするわ。彼が望むなら王になる障害も取り除いてきた。」


「ま、まさか。」


「ふふ。あの高慢ちきな王族たちはサテアン様を傷つけすぎたわ。貴方を逃がした事と第一夫人の座を謀ったことの罪はそうして償った。でも……次はないの。ねえ、シリル。貴方がサテアン様のものになったらサテアン様は喜ぶのかしら。」


「お姉ちゃんは愛してる人が他の女の人を娶るのが平気なの?」


「-ーその呼び方はやめて!!平気な訳がない!でも!そしたら、どうしたら私は!」


お姉ちゃんの目は私を見ていなかった。揺れる瞳。


その瞳には狂気が見え隠れしていた。









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