引き裂かれた末は7
**文章内に残虐行為を含みます。
サテアン王子はどうやら私を今どうにかするつもりはないらしい。それどころか丁重に私を扱った。
手の枷は外してくれないけれど。
私の強みは「レメの祝福」を持つということ。これが有る限りは多分殺されたりはしない。
私は以前の弱虫じゃない。
私にはルーンが居るんだもの。
妹たちだって確認したわけでもないのに本物だって証拠はない。宮殿に着くまでに逃げれたら上手く行くに違いない。
その日は夜中まで宴が続いた。
私はひどく疲れてウトウトとしてしまった。
*****
その手はひどく私を優しく扱った。
軽い口付けは次第に深くなって、私の唇をなぞった。
首元にも湿りを感じて私は泣きそうになった。
リアン……
リアン……
そう思ったとたん覚醒した。
「だ、誰!?」
そこにはサテアン王子のドアップが!!
ありえない!
ありえないから!!
必死にもがくとシャラシャラと腕の枷が音を出した。
「どうにかして逃げたいか?そんな気が起きぬよう私のものにする。」
「わ、私じゃなくても……いいじゃないですか!」
そうよ、あなたには第一夫人のフォンティーヌお姉ちゃんがいるでしょ?それに、もしもそれが物足りなかったとしてもより取り見取りよ!
「本当にお前は判っちゃいない。他の女など必要ない。」
え、ちょっと。その紐引っ張っちゃうと脱げちゃうんで!私が必死に抵抗しているとサテアン王子が笑った。
「生娘でもないのに、初々しいな。」
そ、そうなんだけども!初めての3日間だけなんだもん!慣れているあなた達と同じにしないで!
「動けば脱げるぞ。」
た、確かに!
そう思って動きを止めるとサテアン王子は増々面白そうに笑って紐をひっぱった。
ず、ズルい!
肩から服が落ちて胸元に止まった。こ、これ以上動くと……。
私の心配をよそにのしかかってきたサテアン王子と目が合う。
この目……。
この目を私は知っている。リアンと同じ欲望に満ちた目……
体がすくむ。リアンには喜んで差し出した体が強張ってそれを拒否している。
「あの男はお前を激しく求めただろう?」
「り……リアンは……。」
「その名は二度と口にするな!」
ボスッ
私の言葉でサテアン王子が頭の横の枕を思い切り殴った。ヒラヒラと羽毛が飛び散る。
あ、あなたが言い出したでしょうに!言い返せる気力は無いですけど!
「俺たちに流れる血は水の巫女を必要とするように出来ているんだ。王族は飢えているのだよ。巫女の血に。」
「へっ!?」
「教えてやろう。本物の巫女であるお前に。神であるレメが愛した王にレメは水を与え王国を支えた。しかし人間である王はやがて歳をとって死ぬ……嘆いたレメは王国を去るがその息子のため、その子孫の為に水の使いをやることを約束した。レメの祝福を与えられた娘と結ばれれば王国は水に満たされる。そして、祝福を受けた娘の額に印をつけた。本物に出会ったとき、流れる血が逆流するように相手を求めると言う。」
「……。」
「そんな話は信じていなかった。王宮にひしめき合ってる巫女を見てそんなものを感じたことが無いからだ。」
「……。」
「だが……それが偽物の巫女だと知り、本物の水の巫女のお前を見た時、言い伝えは真実だったとわかった。お前は私の血を揺さぶる……シリル……。」
寡黙だったサテアン王子が饒舌に語る。
語りながら、唇は鎖骨をなぞりだんだんと下がってくる……。ここは女の子の最終手段キ〇的だろうか!?
この雰囲気で!?
私、死ぬんじゃない!?
必死の抵抗のつもりで身をよじるも面白そうにサテアン王子の唇が追ってくる……ひえ~っ。
もう仕方がないと舌を噛むよりましだと足に力を入れた時、ドアを叩く音がした。
「サテアン様?」
声は若い女の声だった。
「寝酒はいかがですか?」
その声にサテアン王子の顔が歪む。イライラした口調で返事をした。
「頼んだ覚えはない。」
「そう言わずに……。」
カチャリと難なく鍵を開けた女は薄絹をまとっていたがほとんど裸だった。
ドッツイ……。確か、この屋敷の娘……。
私がそう顔を確かめた時にはもうサテアン王子はドア口に向かっていた。
バシュッ
「や、止めて!!」
そう、叫んだ時には遅かった。
剣を取ったサテアン王子は何のためらいもなく剣を振り下ろして……
ドサリとした音の先には盆を持ったままの娘の手首が転がっていた。